階段昇降が呼吸機能に与える効果とは?
私は「階段の登り降りで13 kg減」に成功した40代です。もともとは体重を落とすことが目的で始めた階段登り降りですが、続けるうちに、予想していなかった “呼吸の変化” に気づくようになりました。体が軽くなるのと同時に、日常の中で「そういえば最近、階段を上っても息が切れにくくなった」「歩いている時の呼吸が以前より楽になった」と感じる場面が増えたのです。これは明らかに、肺や呼吸筋が以前よりもしっかりと働くようになった証拠だと実感しています。
実は、階段の登り降りという身近な動作は、単なる有酸素運動にとどまらず、呼吸機能の改善にもつながる優れた運動なのです。特に、横隔膜や肋間筋といった “呼吸を支える筋肉” に自然な負荷をかけることで、意識しなくても呼吸の深さやリズムが整い、持久力や集中力の向上にもつながっていきます。年齢とともに「息切れしやすくなった」「すぐ疲れるようになった」と感じる方にこそ、この運動の隠れた効果を知っていただきたいと感じています。
この記事では、階段の登り降りが呼吸機能に与える具体的な影響や、その科学的なメカニズム、呼吸が楽になることの身体的・精神的なメリット、そして私自身の体験も交えながら、日々の生活に無理なく取り入れる方法をわかりやすくご紹介していきます。
普段運動をしていない方、階段がつらくて避けている方にこそ、ぜひ読んでいただきたい内容です。呼吸が整うことで、体も心もスッと軽くなる――そんな実感を、みなさまにも味わっていただけたらうれしいです。
呼吸の仕組みと「呼吸筋」の働き



出典:BodyParts3D, Copyright© 2008 ライフサイエンス統合データベースセンター

呼吸は肺が空気を取り込み吐き出す動作ですが、肺自体には筋肉がなく、自分で勝手に膨らんだり縮んだりはできません。代わりに、肺の周囲を取り囲む「呼吸筋」と総称される筋肉群がポンプの役割を果たしています。主要な呼吸筋としては、お腹の奥にある横隔膜、肋骨の間にある肋間筋が挙げられます。
横隔膜が収縮して下がると胸郭(胸の空間)が広がり、肺に空気が流入して吸息が行われます。逆に横隔膜がゆるむと胸郭がしぼみ、肺から空気が押し出されて呼息が行われます。
つまり横隔膜は息を吸うときに最も重要な筋肉であり、ここを中心に肋間筋なども協調して働くことで私たちは24時間休むことなく呼吸できているのです。
しかし、この呼吸筋は加齢とともに衰えることが知られています。実は呼吸機能は30代から徐々に低下し始め、筋肉が硬く弱くなることで肺に古い空気が残りやすく、新鮮な空気を取り込みにくくなります。その結果、換気効率が悪化して浅く速い呼吸になりがちで、息苦しさや全身の疲れを招くこともあります。このように年齢や運動不足によって弱った呼吸筋をしっかり動かし、再び柔軟で強い状態に保つことが呼吸機能改善のカギとなります。
出典:呼吸筋トレーニング器具 肺の呼吸筋力を鍛える筋トレなら POWERbreathe
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階段昇降で呼吸機能が鍛えられる理由

なぜ階段の登り降りが呼吸機能のトレーニングになるのでしょうか? ポイントは階段の登り降りが手軽にできる有酸素運動だからです。階段を登ると心拍数が上がり呼吸が弾みますが、この時まさに横隔膜や肋間筋といった呼吸筋がいつも以上に大きく動いています。いわば階段の登り降りは「呼吸の筋トレ」です。
少しキツいと感じるくらいの階段の登り降りを繰り返すと、普段あまり使われない呼吸筋までしっかり動員されるため、それらの筋持久力が向上します。筋トレで足腰を鍛えるように、呼吸に使う筋肉も鍛えることができ、これによってより深く大きな呼吸ができるようになるのです。
実際、階段の登り降りの継続は心肺機能の指標である最大酸素摂取量(VO2max)を高める効果があります。カナダの研究では、階段昇降をインターバル的に1日10分程度・週3回行う運動プログラムを6週間続けたところ、参加者のVO2maxが約12%も向上したと報告されています。
VO2max向上 = 身体が酸素を取り込んで利用する能力が上がったということで、これは裏を返せば肺が以前より効率よく空気を出し入れできるようになったとも言えるでしょう。
階段の登り降りのような有酸素運動を続けることで心肺持久力が高まり、肺が効率よく大きく使えるようになります。運動習慣によって肺活量が増し十分に膨らむようになると、酸素供給がスムーズになり息切れしにくくなります。現に、階段を日常的に使う人は息切れしにくく疲れにくい体を手に入れられるとされます。
言い換えれば、階段の登り降りは心臓や肺を鍛える最適な方法であり、日常的に続けることで “息が上がる” までの余裕度が増していくのです。
さらに階段の登り降りは下半身の大きな筋肉(太ももや臀部)も使うため、血流が促進され肺だけでなく心臓の機能向上にもつながります。心肺機能全体が底上げされることで、安静時の呼吸もゆったりとしてきて、結果的に呼吸筋の疲労が起きにくい体質へと変化していきます。
「最初は階段を数階上がるだけでゼーゼーしていたのが、続けるうちに息が上がりにくくなった」というのは、まさに呼吸筋と心肺のトレーニング効果が現れた証拠なのです。
出典:呼吸筋トレーニング器具 肺の呼吸筋力を鍛える筋トレなら POWERbreathe
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呼吸機能が向上すると得られるメリット

階段の登り降りによって呼吸機能が鍛えられ、深く楽な呼吸ができるようになると、私たちの体と心には様々なメリットがもたらされます。
身体的メリット(スタミナアップ・健康増進)
- 息切れしにくくなる:
- 呼吸筋が強化され肺活量が上がると、階段や坂道でも息が上がりにくくなります。持久力が向上し、疲れにくい体になれるのは大きな利点です。
- 実際「階段を使っても息切れしなくなった」と感じれば、日常生活や他の運動にも自信がついてきます。
- 全身の酸素供給が改善する:
- 呼吸が浅いと血中の酸素が不足しがちですが、深い呼吸ができるようになると体中に十分な酸素が行き渡ります。筋肉への酸素供給が増えることで代謝や持久力がさらに向上し、動作も軽快になります。
- また心肺機能が向上することで安静時の心拍数や血圧が下がる傾向も報告されており、循環器系の健康にも良い影響があります。
- 生活習慣病リスクの低減:
- 有酸素運動である階段の登り降りにより心肺機能が高まると、肥満・高血圧・糖尿病など生活習慣病の予防にもつながります。
- 実際に階段をよく使う人は心臓病の一種である心房細動のリスクが低いというデータもあり、呼吸機能向上=運動習慣の獲得が全身の病気予防につながる好循環が期待できます。
メンタル的メリット(ストレス軽減・気分改善)
- ストレスに強くなる:
- 階段の登り降りのような運動をすると脳内でエンドルフィンなど “気分を上げる” ホルモンが分泌され、ストレスや不安感を軽減してくれます。
- 適度に息が弾む運動後は気持ちがスッキリし、「爽快感」や「達成感」を味わえるでしょう。日々のストレス解消やメンタルヘルスにも有効です。
- 深い呼吸でリラックス:
- 呼吸機能が高まると日常的な呼吸も深くゆったりとしてきます。深い呼吸は副交感神経を優位にし心身を落ち着かせる効果があるため、呼吸機能の改善はそのままリラックスしやすい体質づくりに役立ちます。
- イライラしにくくなったり、よく眠れるようになったりといった精神面の好影響も期待できるでしょう。
呼吸が深く穏やかになることで得られるリラックス効果は見逃せません。近年、「呼吸と感情は表裏一体」であることが分かってきており、深くゆっくりした呼吸ができると心が安定して不安感が軽減すると指摘されています。
実際に呼吸筋を鍛えて “呼吸力” を上げると自然と落ち着いた呼吸リズムになり、気分の落ち込みから抜け出せるという報告もあります。階段の登り降りによる心肺機能アップは、こうした安定した呼吸を手に入れる下支えとなり、ひいてはメンタル面の調子も整えてくれるのです。
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呼吸機能を高める階段昇降のやり方

呼吸機能改善のために階段昇降を生活に取り入れるなら、無理なく継続することが何より大切です。ここでは初心者でも始めやすい実践方法や頻度の目安、呼吸を意識したステップのポイントをご紹介します。
- 日常の一部に組み込む:
- エレベーターやエスカレーターを使わず階段を選ぶ習慣をつけましょう。通勤通学時や買い物時に数階分歩くことから始めてみてください。
- 最初は息が上がっても問題ありません。毎日の積み重ねで次第に慣れてきて、「あれ、今日は少し楽だかも?」と感じるようになります。
- 頻度と時間の目安:
- 本格的にトレーニングとして行うなら、週に3~5日程度、1日あたり合計10分以上の階段昇降を目標にしてみましょう。研究でも1日10分程度の階段昇降を週3回行うだけで心肺機能が向上した例が報告されています。
- 慣れてきたら少しずつセット数や速度を増やし、最大で1日20~30分程度まで増やすと効果的です。
- 呼吸を意識する:
- 階段を登る際は息を吐くタイミングに意識すると楽になります。具体的には、一歩踏み出すごとに「フッ、フッ」と小刻みに息を吐き、2~4段上がったら一旦立ち止まって鼻から息を吸う、というリズムを試してみてください。
- 吐く息を意識することで横隔膜の動きが安定し、息切れしにくくなります。登り切った後は深呼吸して呼吸を整えるくせもつけましょう。
- 姿勢と安全にも配慮:
- 階段登り降り中は背筋を伸ばし視線は足元ばかり見ないようにします。猫背にならないことで肺が圧迫されず呼吸しやすくなります。また、手すりはバランス維持のため軽く添え、特に下りは転倒防止のため無理に駆け下りないよう注意してください。
- 家庭で踏み台昇降を行う場合も、足がしっかりステップに乗るようにし、滑り止めマットなどで安全を確保しましょう。
以上を心がけ、自分のペースで徐々に負荷を上げていくことがコツです。最初のうちは翌日に筋肉痛や疲労を感じるかもしれませんが、それは呼吸筋や脚力が鍛えられている証拠でもあります。十分な休息をとりながら、継続してみてください!
出典:わずか10分の「階段昇降」が実践的な運動に 階段なら続けられる | ニュース | 糖尿病ネットワーク
【実践編】階段を上るとき|ぜん息などの情報館|
運動中の呼息意識呼吸が階段昇降運動後の呼吸状態および下肢疲労感に与える影響
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私の体験談:13 kg減とともに感じた呼吸の変化

実際に私自身、階段の登り降りダイエットを始めて数年で13 kgの減量に成功しました。その過程で感じたのが呼吸の変化です。始めた当初は6階まで上がるだけで息が切れ、ゼーハーと肩で息をしていました。ところが体重が落ち筋力がついてくるにつれ、同じ階段を上がっても息が苦しくならないのです。エレベーター無しでも平気になり、自分でも驚きました。
ダイエット前は少し小走りしただけで動悸と息切れがしていたのが、今では階段を駆け上がっても呼吸がすぐ整います。これは明らかに呼吸持久力(肺と心臓のスタミナ)が向上した証拠だと感じています。体重減少で心肺への負担自体が軽くなったこともありますが、何より階段の登り降りという習慣が「息切れしにくい体」をつくってくれたと実感しています。
また呼吸が楽になると精神的にも余裕が生まれました。浅い呼吸で常にハァハァしていた頃はなんとなく気持ちも落ち着かなかったのですが、今は深呼吸をするとスーッと気分転換できる感じがあります。階段の登り降りで汗を流した後は爽快で前向きな気持ちになりますし、夜もぐっすり眠れています。
呼吸が整うことがこれほど生活の質(QOL)に影響するとは思いませんでしたが、自ら体験して大きなメリットを痛感しています。
まとめ:「呼吸が変われば、明日が変わる」


階段の登り降りは特別な才能もお金も必要なく、今日から始められる呼吸機能トレーニングです。私自身、減量と健康維持に大いに役立てていますが、それ以上に「息切れしない体になれた!」という自信が日々の生活を明るくしてくれました。
ぜひ皆さんも無理のない範囲で階段を味方につけて、肺と心臓を元気にするシンプルダイエットを実践してみてください。きっと数ヶ月後には、階段の上で笑顔になっている自分に気づくはずです!
おことわり
本記事は筆者個人の健康診断結果と経験に基づくものです。記載内容は一般的な医療アドバイスではなく、読者の皆様の健康状態については必ず医療専門家にご相談ください。また、本記事の情報は執筆時点のものであり、最新の医学的知見とは異なる可能性があります。
本記事で使用した画像はNapkin AIを利用しています。