「同じ運動なのに心拍が上がらない」:その日、身体に何が起きている?
運動を続けていると、「今日は心拍数が上がらないな」と感じる日がありませんか?
いつもと同じ階段を登っても息が上がらず、スマートウォッチの心拍計を見ると数値が低い —
そんな “反応しない日” は誰にでも起こり得ます。
実はこの現象、単なる気のせいではありません。
心拍数が上がらない背景には、自律神経の状態・睡眠の質・疲労・栄養不足など、身体コンディションの変化が関係しています。
特に階段の登り降りのように日常的に取り入れやすい運動では、コンディションの違いが数値として現れやすいのです。
本記事では、私がスマートウォッチで記録した階段の登り降り運動の心拍データをもとに、
「心拍数が上がらない日の原因」と「改善のための実践策」を検証・解説します。
この内容を知っておくと、あなた自身の “心拍の波” を理解し、その日の体調に合った運動調整ができるようになります。
階段運動で検証:心拍数の変化

同じ階段運動でも “反応する日” と “鈍い日” がある
わたしは毎朝、身近な階段(地上6階分・約100段)を使って最近は60分間前後の登り降り運動を実践しています。
スマートウォッチで計測を続ける中で、明らかに同じメニューでも心拍数が上がりにくい日があることに気づきました。
そこで、心拍が上がらない日と通常日のデータを比較してみました。
実測データ比較
| 状態 | 運動内容 | 平均心拍 | 最大心拍 | 消費カロリー | 睡眠時間 | 体感強度 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 通常日 | 6階×20往復(60分) | 132 bpm | 146 bpm | 98 kcal | 7時間半 | 「ややきつい」RPE13 |
| 疲労・寝不足日 | 同上 | 118 bpm | 125 bpm | 84 kcal | 5時間 | 「楽だった」RPE10 |
分析①:睡眠不足と自律神経の関係
「心拍が上がらなかった日」は、前夜の睡眠時間が短く、体温も平常より低下していました。
睡眠不足によって副交感神経優位な状態が続くと、交感神経が刺激されにくくなり、運動時の心拍反応が低下します。
米国心臓協会(AHA)は、睡眠時間が6時間未満の日が続くと自律神経のバランスが乱れ、心拍や血圧の調整機能に影響が出やすくなると報告しています。そのため、運動時にも通常より心拍が上がりにくい状態になることがあります。
分析②:疲労蓄積による反応鈍化
心拍が上がりにくい日は、筋肉に軽い張りや重さが残っていることが多く、これはオーバートレーニング初期の兆候でもあります。
身体が十分に回復していない状態では、自律神経系(特に交感神経)の働きが乱れ、運動時の心拍反応が低下することが報告されています。
分析③:消費カロリーも下がる
心拍が低くなると、当然ながらエネルギー消費量も減少します。
スマートウォッチの算出では、心拍数146 bpmの日は約98 kcal、125 bpmの日は約84 kcal。
およそ15%の差が出ており、これは「同じ運動でも燃焼効率が下がる」ことを意味します。
分析④:朝の体温・ウォームアップの重要性
低体温のまま運動を始めると、筋温が上がるまでに時間がかかり、血流量・酸素供給量も不十分なまま運動に入るため、心拍反応が遅れます。
階段運動の前に 3 分ほどストレッチや軽い足踏みを行うと、心拍数が事前に上昇し、運動時のパフォーマンスが高まりやすいことがウォームアップ研究で示されています。
出典:Warm up I: potential mechanisms and the effects of passive warm up on exercise performance
Warm-Up Strategies for Sport and Exercise: Mechanisms and Applications
階段運動でも心拍数が上がらない日の特徴と改善のヒント
同じ階段の登り降りをしていても、「心拍数が上がる日」と「上がらない日」があります。
これは運動能力の差ではなく、その日の体調や自律神経の働きによるものです。
私が定期的に行っている地上6階分(約100段)を60分間登り降りする運動でも、
通常日は最大心拍146bpm、疲労・寝不足日では125bpmと、約20bpmの差がありました。
消費カロリーにも約15%の開きがあり、「同じ運動でも燃焼効率が下がる」ことが確認できます。
運動しても心拍数が上がらない日の原因別チェックリスト

心拍が上がらないのは “身体の問題” だけではない
階段の登り降りのようなシンプルな有酸素運動では、毎回ほぼ同じ動きをしているのに、
「今日は心拍が上がらない」「なぜか楽すぎる」と感じることがあります。
その原因は、体調・環境・測定条件の3つの側面に潜んでいます。
ここでは、科学的根拠と実測データをもとに “心拍が上がらない日” を見抜くためのセルフチェックを紹介します。
① 体調・自律神経の乱れ
最も多い原因は、睡眠不足・疲労・ストレスによる自律神経の乱れです。
睡眠制限や睡眠不足は、心拍変動の乱れやサブマキシマル運動時の心拍反応の低下、自律神経のアンバランスなどを引き起こす可能性があると報告されています。
一方で、“最大心拍数 (HRmax) の具体的な定量的低下” を示す十分なエビデンスは、現在のところ確認されていません。
また、トレーニング後の疲労が抜けきらない状態では、体が “守りのモード” に入り、
心拍上昇が意図的に抑制される傾向があります。
出典:60-Hour Sleep Deprivation Affects Submaximal but Not Maximal Physical Performance
チェックポイント
- 睡眠6時間未満の日が続いていないか
- 体温が平常より低く、だるさを感じないか
- 筋肉の張り・疲労感が残っていないか
② 栄養・水分・ホルモンの影響
朝食を抜いたり、水分不足のまま運動を始めると、血液量と酸素供給が低下し、心拍数が上がりにくくなります。
特に糖質不足や鉄分不足は、エネルギー産生と酸素運搬を阻害するため、
「頑張っても反応しない」状態を招きます。
女性の場合はホルモン周期(黄体期)により体温・代謝が変化し、心拍上昇が緩やかになることもあります。
出典:Carbohydrate intake during exercise and performance
Marginal iron deficiency without anemia impairs aerobic adaptation among previously untrained women
✅ チェックポイント
- 朝食や水分を摂らずに運動していないか
- 鉄分・炭水化物を意識的に摂取できているか
- 生理周期による変化を把握しているか
③ 環境・タイミングの要因
心拍反応は、外気温や時間帯でも変化します。
冬の朝など体温が低い時間帯は血流が少なく、心拍が上がるまでに時間がかかります。
一方で、夕方は交感神経が活発になりやすく、心拍が上がりやすい傾向があることが報告されています
✅ チェックポイント
- 朝一番の運動で体がまだ冷えていないか
- 室温・湿度が極端に低くないか
- ウォームアップを省略していないか
④ デバイス・測定誤差
意外と多いのが、計測機器の誤差です。
スマートウォッチの光学式心拍センサーは、装着が緩い・汗で反射が乱れる・皮膚が冷えて血流が少ない場合に誤差が出ます。
実際、手首から骨が出ている位置に装着すると平均5〜10 bpm低く表示されることが知られています。
✅ チェックポイント
- 手首から指2本上の位置にしっかり装着しているか
- センサー面が清潔か・汗で曇っていないか
- ウォームアップ後に装着し直しているか
心拍数が上がらない日の原因を見直し、正しく対処するために
「心拍が上がらない日」は、体の不調・測定環境・機器誤差のどれか、または複合的な要因で起こります。
まずは睡眠・体温・装着状態をチェックし、問題がなければ運動内容やタイミングを調整してみましょう。
心拍数の波は、身体のコンディションを映す “生体モニター” です。
データを正しく読み取れば、無理のない運動調整と長期的なパフォーマンス向上につながります。
心拍数を上げるための具体的な対策:どんな運動にも応用できるコンディション改善法

「心拍が上がらない」は、身体が “まだ準備できていない” サイン
心拍反応の鈍さは、運動能力の低下ではなく「準備不足」であることが多いです。
運動前のウォームアップや呼吸・姿勢を整えるだけで、最大心拍が10〜15bpm上昇することも報告されています。
ここでは、どんな運動にも応用できる「心拍が自然に上がる身体の整え方」を紹介します。
① ウォームアップで “交感神経スイッチ” を入れる
冷えた体で急に動くと、筋温が低く血流が追いつかず、心拍が上がりにくくなります。
運動前に3〜5分の動的ストレッチ(腕回し・足踏み・体幹ひねりなど)を行うと、筋温が1℃上昇し、心拍反応が約10%向上します。
朝に運動を行う場合は、軽いジャンプや階段1往復など「心拍110bpm程度まで」上げてから本番に入るのがおすすめです。
✅ ポイント
- スタティック(静的)ストレッチは避け、リズミカルに動く
- 「少し温まってきた」と感じるまで3〜5分続ける
② 呼吸を意識して “酸素のリズム” を整える
心拍は呼吸と連動しています。
息が浅いと酸素供給が不足し、心臓が省エネモードに入って拍数を抑制します。
反対に、腹式呼吸+一定リズムを意識することで、自然に心拍が引き上げられます。
研究では、2歩吸って2歩吐く呼吸法(呼吸:歩行比=1:1)が最も心拍上昇効率が高いとされています。
出典:Locomotor-respiratory coupling during axillary crutch ambulation
✅ 実践例
- 2階分の階段を「2歩吸う・2歩吐く」ペースで登る
- 姿勢を正し、胸郭を広げて呼吸のリズムを一定に
③体温と水分の管理で “巡る体” を作る
水分不足(体重の1〜2%減)で心拍反応が抑制されることが分かっています。
運動前にコップ1杯(約200ml)の水を摂るだけでも、血液循環と心拍反応が安定します。
また、朝の低体温時には白湯や温かい飲み物で内臓温を上げておくと、筋温上昇が早くなり、心拍もスムーズに上がります。
出典:Influence of graded dehydration on hyperthermia and cardiovascular drift during exercise
✅ 実践例
- 運動30分前に200mlの水分補給
- 冷たい飲み物ではなく常温・温かい飲料を選ぶ
④ 音楽・リズム刺激で自然に心拍を引き上げる
心理的刺激も心拍上昇に影響します。
テンポの速い音楽(BPM120〜140)は交感神経を刺激し、心拍数を平均7bpm上げる効果が報告されています(参考:Psychophysiology, 2019)。
階段運動やウォーキング時にテンポを合わせると、心拍上昇と運動効率が自然に高まります。
出典:The effects of music tempo and loudness level on treadmill exercise
✅ おすすめ
- 運動前にBPM120前後のアップテンポな曲を聴く
- 音楽と歩幅・テンポを同期させて動く
⑤ 運動後の「クールダウン」も心拍アップの鍵
意外に見落とされがちですが、運動後の回復が早いほど翌日の心拍反応も良くなることが分かっています。
軽いストレッチや深呼吸で副交感神経を整えると、睡眠の質が向上し、翌朝の心拍上昇がスムーズになります。
運動で心拍数を上げるための5つの習慣と改善ポイント
心拍数を上げるために必要なのは、「心臓を鍛える」のではなく、身体全体の準備力を高めることです。
ウォームアップ→呼吸→水分→リズム→回復の5ステップを意識すれば、
どんな運動でも「心拍が上がらない日」が減り、代謝効率も確実に上がります。
心拍が上がらない日の運動メニュー調整:階段運動で “体調に合わせて” 続ける

「心拍が上がらない日」こそ、身体にやさしい階段の使い方を
心拍数が上がりにくい日は、疲労や睡眠不足、体温の低下など、
身体が “守りモード” に入っているサインです。
そんな日に無理をして高負荷の階段ダッシュを行うと、回復を遅らせてしまうことも。
重要なのは、強度を下げても代謝を維持する方法を選ぶことです。
① 軽め+長めが基本:ペースよりも時間を意識
心拍が上がらない日は、短時間の高強度ではなく低強度・長め(10〜15分)を目安にします。
ペースを落としても、時間を伸ばすことで有酸素ゾーン(心拍110〜130 bpm)をキープでき、脂肪燃焼効率を維持できます。
🔹 実践メニュー(例)
- 1〜3階をゆっくり往復 × 10セット(約12分)
- リズム:30秒登る → 30秒下る
- 呼吸:鼻吸い・口吐きでペース一定
- 1階〜3階をゆっくり往復 × 10セット(約12分)
- リズム:30秒登る → 30秒下る
- 呼吸:鼻吸い・口吐きでペース一定
✅ ポイント
- “心拍を上げる” より “リズムを保つ” 意識
- 息が切れない程度(会話ができるレベル)が理想
② 体を温めてから始める「ウォームアップ階段」
心拍反応が鈍い日は、最初の3〜5分でウォームアップを兼ねます。
基本の動き
→ この時点で軽く息が上がる程度が目安(心拍100〜110 bpm程度)。
→ 体重を抜いて、膝に負担をかけずに下るのがポイント。
→ 「登る → 軽く下る → また登る」というリズムを続ける。
→ 合計3〜5分ほどで筋温と心拍が自然に上昇します。
研究では、運動前に軽いウォームアップを行うことで、心拍の立ち上がりがスムーズになり、運動パフォーマンスが向上しやすいことが報告されています。
出典:Warm up I: potential mechanisms and the effects of passive warm up on exercise performance
Warm-Up Strategies for Sport and Exercise: Mechanisms and Applications
③ 疲労が強い日は “分割メニュー” に切り替える
体が重い・だるい日には、10分を一度に行わず、3分×3回(朝・昼・夕)に分けてもOK。
この「マイクロワークアウト」は、血流促進と代謝維持に効果的で、合計時間が同じでも脂肪燃焼量はほぼ変わらないとされています。
🔹 分割メニュー例
- 朝:3階分×3往復(3分)
- 昼:同じメニューをもう一度
- 夜:軽めに1〜2階分で終了
✅ 効果
④ 翌日に向けたリカバリーも “トレーニングの一部”
階段の登り降り運動後は、ふくらはぎ・太ももを軽くストレッチして血流を促進。
水分とミネラルを補給し、睡眠を確保することで翌日の心拍反応が回復します。
「今日は上がらなかった」=悪い日ではなく、
身体のサインに合わせて調整できた日こそ、長期的には成果が出やすいのです。
心拍数が上がらない日の階段運動メニューと改善ポイント
心拍数が上がらない日こそ、無理をせず “柔らかい運動” を。
階段の登り降りは、負荷も時間も自在にコントロールできる万能トレーニングです。
「短く・ゆっくり・分けて」続けることで、
翌日には心拍も代謝も自然に戻り、安定したコンディションを保てます。
まとめ:心拍の波を味方に、続ける力へ

心拍数が上がらないのは、身体が発している “コンディションのサイン”
運動時に心拍数が上がらないのは、身体が休息を求めているサインであり、異常とは限りません。
主な原因は、睡眠不足・ストレス・疲労・栄養状態・運動への慣れなどの一時的な要因です。
自律神経を整え、栄養・水分・休養を意識すれば、心拍反応は自然に戻ります。
「心拍が上がらない日=悪い日」ではなく、身体の声を聞きながら調整できるチャンスと捉えることが大切です。
「心拍が上がらない日」も、前進のチャンスに
運動を続けていると、誰にでも「今日は心拍数が上がらないな」という日があります。
それは体調が悪いからではなく、身体が今どんな状態かを教えてくれるサインです。
疲労・睡眠・栄養・体温、どの要素も心拍反応と密接に関係しており、
それを理解して運動を “調整” できる人ほど、長期的に成果を出しやすくなります。
特に階段の登り降りは、場所を選ばず、ペースや時間を自在に変えられる万能トレーニング。
「心拍が上がらない日」は、身体を整える “リカバリーデー” と捉えて、
無理に追い込まず、整える動きに切り替えることで回復力も向上します。
最後に
“心拍が上がらない日” は、あなたの身体が次のステップに進むための調整期間です。
焦らず、データと感覚を見ながら階段の登り降りを続ければ、
確実に代謝力・心肺機能・コンディションが整っていきます。
小さな記録と観察を積み重ねることが、
「上がらない日も成果につなげる」最も持続的なトレーニング法です。
おことわり
本記事は筆者の実測データおよび一般的な運動生理学の知見をもとに作成したものであり、医療・診断・治療を目的とするものではありません。
運動強度や心拍数の反応には個人差があり、既往症や体調によって適切な範囲が異なります。
新たな運動を始める際や、体調に不安がある場合は、必ず医師または専門家にご相談ください。
本記事で使用した画像はNapkin AIを利用しています。
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