階段の登り降りが10年続いた理由:データと習慣設計で見えた “地味な継続力”

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この人は本当に続けているのか?:“地味な運動” が10年続いた背景

階段の登り降りなんて、すぐ飽きそう」。
そう思う人は多いでしょう。私自身も、かつてはそうでした。
ランニング、筋トレ、ジム、ヨガ……あらゆる運動を試し、三日坊主で終わるたびに「意志が弱い」と自分を責めていました。

けれど、ある日ふと「いつもの階段を一番上まで登ってみよう」と思ったのが始まりでした。
最初は、登れる分だけ。
特別な決意も、目標もありませんでした。

気づけば ─ その “なんとなくの一歩” が、10年続いていました。

毎週のように測ってきた心拍数や体脂肪率、体重のデータは、派手さはないけれど、確かに右肩下がりを描いています。
そして何より、仕事や生活のリズムが安定し、「動かない自分」に戻らなくなりました。

この Persistent では、感情ではなく「証拠」で語ります

なぜ階段の登り降りがここまで続いたのか?
数値・習慣設計・心理の三つの観点から、“地味な継続力” の正体を解き明かしていきます。

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階段を選んだ理由:シンプルさが最強の設計だった

階段を登り降りする運動サイクル

運動を続けるうえで、最初の壁は「始めること」ではなく「続けること」でした。

当時の私は、仕事が忙しい40代。時間を区切って運動すること自体がストレスになっていました。
ジム通いは荷物の準備と移動で1時間が消え、ランニングは天気に左右され、筋トレはやる気が続かない。

どの方法も、始める前に “面倒くささ” が勝ってしまっていたのです。

そんなある日、ふと気づきました。
階段ってどこにでもあるじゃないか」と。

会社のビルにも、最寄り駅にも、自宅のマンションにも ─ 1日に何度も目にしている
しかも無料で、器具も要らない

もしこれを “運動” と捉え直せば、わざわざ時間を作らなくても身体を動かせるのではないか。

それが、私が階段の登り降りを選んだ最初の理由です。

最初の1か月は、昼食後の散歩程度のイメージ。
でも、「なんとなく動いた」その積み重ねが、少しずつ身体に変化をもたらしました。

階段を登るときの心拍数、息の上がり方、脚の疲れ具合 ─ その日の体調がはっきり分かる。
運動というより、「自分の状態を測る “リトマス試験紙”」になっていったのです。

そして気づきました。
階段の登り降りは、“習慣の摩擦”が極端に少ない

・シューズもウェアも要らない
・移動のついでにできる
・やった直後に “効いた” 実感がある

この3つの条件が揃う運動は、意外とほとんど存在しません

もう一つ、階段の登り降りには独特の心理的効果があります。

たった数段でも、「上に向かう」という動作自体が小さな達成感をくれる。
自分を追い詰めず、日常の流れの中で達成感を積み上げられる──
この“ご褒美設計”が、無意識に継続を後押ししていました。

運動は「努力」ではなく「設計」だと、私はこの頃から感じ始めていました。

意志の強さよりも、環境と仕組みが整っていれば、人は自然に動き出す
その第一歩が、何気ない “階段の登り降り” だったのです。

データで見る10年の階段の登り降り:数字が語る “地味な一貫性”

安定の象徴

「続けている」と口で言うのは簡単です。
でも本当に続いているかどうかは、データが一番正直に教えてくれます。

私は2019年から、スマートウォッチを使って運動記録をつけてきました。
10年間のログを振り返ると、そこには見事なまでに「地味な安定曲線」が描かれていました。

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10年間の平均データまとめ

  • 平均心拍数:120〜130 bpm
  • 1回あたりの運動時間:20〜30分
  • 週あたりの登り降りセッション:2〜3回
  • 年間実施回数:約150回前後

この数字だけを見ると、特別な運動量には見えません。
でも、累積すると ─
10年間で約1,500回、総上昇高は富士山100回分以上

それはもはや、“やる気” では説明できない “習慣の力 でした。

心拍と体組成が示した「静かな右肩下がり」

階段を始めた当初は、4階分を登るだけで息が切れ、心拍数は140 bpmを超えていました。
しかし1年後には120台に落ち着き、同じ動作でも “楽に登れる” 感覚が増えていきました。

それに合わせて、安静時心拍数は70 → 60 → 58へ。
体重も10年間で−13 kg、体脂肪率は−7%。
血液検査では中性脂肪と肝機能値(ALT・γ-GTP)が正常範囲に改善

これらの変化は、1か月や3か月では見えません。
1年単位で初めて現れる “微細な右肩下がり” を、10年積み重ねて初めて確信に変わるのです。

“波の小ささ” が継続の証拠だった

データを見返して気づいたのは、数値の上下よりも “波の小ささ”。
体調や季節によって多少の差はあっても、グラフ全体は常に一定のリズムを保っていました。

無理に負荷を上げず、“心拍140前後で気持ちよく終える”
このシンプルなルールこそが、10年継続を支えた最大の要因です。

人は数字に圧倒されると、すぐに頑張りすぎてしまう。
しかし階段の登り降りは、“頑張らない強度” を自然に維持できる運動

だからこそ、身体にも心にも “静かな余白” が残り、継続が続いた

10年のログを眺めながら思うのは、
健康とは成果ではなく、安定の軌跡だということ。

そして、その軌跡を描き続けられたのは、毎日の階段に “測れる喜び” があったからでした。

続かなかった過去の運動法:やる気では続かなかった理由

階段の登り降りを習慣にする前、私は典型的な “運動ジプシー” でした。

仕事の合間にランニングを始め、三日坊主。
YouTubeの筋トレ動画で腕立て伏せに挑戦しても、1週間で飽きる。
スポーツジムに通ってみた時期もありましたが、通うたびに「時間の確保」や「人の目」を気にして疲れてしまいました。

それでも、どこかで「もっとハードな運動をしなければ効果が出ない」と思い込んでいました。
一度走り出すと距離を伸ばしたくなり、筋トレでは負荷を増やしたくなる

けれど、そうして “頑張るモード” に入った瞬間、日常のリズムが崩れていく
忙しい日が続くと一気にペースを失い、結局ゼロに戻る ─ その繰り返しでした。

今振り返ると、続かなかった理由は明確です。
どの運動も「日常と切り離された非日常」だったのです。

準備が必要で、時間を確保しなければならず、天気や場所に左右される
そして何より、“やる気” という一時的な燃料に頼っていた。

一方、階段の登り降り日常の延長線上にありました。

駅、職場、家 ─ どこにでもある階段がそのままトレーニング場所になる
“やる気を出さなくても、ついでにできる”という構造が、これまでの運動との決定的な違いでした。

努力を減らすことこそが、継続の本質だった。
そう気づいてから、私は「頑張ること」よりも「続けられること」に価値を置くようになりました。

派手さはないけれど、生活の中に静かに溶け込んでいく階段の登り降り
それが、他の運動では得られなかった “無理のない一貫性” を生み出してくれたのです。

「派手じゃないこと」が続いた理由:継続の鍵は “摩擦の少なさ” にあった

静かな階段を登る人

階段の登り降りには、努力している実感があまりありません

汗をかいても、誰かに褒められるわけでもない。
見た目も地味で、SNS映えもしない。

それでも私は10年間飽きることなく続けてこられました
理由は単純で ─ “派手じゃないこと” こそ、続けるには最強の条件だったのです。

行動を止めない「摩擦の少なさ」

心理学では、人が行動を続けるかどうかは「行動の摩擦」に左右されると言われます。

準備、時間、環境、気分 ─ どこかに小さな障害があるだけで、人は簡単に行動をやめてしまう
逆に言えば、摩擦が少なければ少ないほど、意志の力に頼らなくても自然に動ける

階段の登り降りは、その “摩擦の少なさ” の塊です。

専用のウェアも器具もいらない
移動のついでにできる
1分でも「やった感」が得られる

この3条件が揃うだけで、運動は「特別な行為」から「生活の一部」に変わります。

意志を使わずにできる行動は、無意識に定着する
つまり、“続ける設計” がすでに環境の中に組み込まれていたのです。

出典:The Power of Suggestion: Inertia in 401(k) Participation and Savings Behavior
How are habits formed: Modelling habit formation in the real world

脳の報酬系が “地味な達成感” を強化する

もう一つ、階段の登り降りが続いた理由は、脳が感じる小さな達成感にあります。

息が弾み、脚に刺激を感じ、体が温まる ─ それらはすべて “即時報酬” として脳に記録されます。
心理学で言う「オペラント条件づけ」では、行動直後の快感がその行動を強化します。

階段を登り降りするたび、脳内ではドーパミンが微量に分泌され、
「またやりたい」という欲求が自然に生まれる

つまり、地味な達成感の積み重ねが、やる気の代わりになっていたのです。

典:Science and Human Behavior
Neuronal Reward and Decision Signals: From Theories to Data

“努力していないのに続く” という構造

階段の登り降りには、「頑張った」という手応えが少ない
けれど、その 努力感の薄さ” こそが継続の秘密でした。

多くの人は「成果を出すには努力が必要」と考えます。
しかし実際には、努力感が小さいほど行動は長続きする

人間は負担を避ける生き物です。

階段の登り降りは、生活に自然に溶け込み、気づけば1日のリズムの一部になっていく。
続けるために必要なのは「やる気」ではなく、“やめる理由がない環境” でした。

10年間続けてみて分かったのは、
継続とは努力の総量ではなく、「摩擦の少なさ」と「報酬の近さ」で決まるということ。

そしてその構造を、階段は完璧に備えていたのです。

継続を支えたマインドと仕組み:意志ではなく、環境が動かした

習慣は “努力の自動化” で完成する

人は「続けたい」と思っても、意志だけでは続かない
過去に何度も失敗してきた私は、それを痛感していました。

だからこそ、階段の登り降りを始めたときから、
“意志に頼らない仕組み” を作ることに集中したのです。

仕組み①:記録が “やる気” の代わりになる

まず取り入れたのは「記録」でした。

スマートウォッチで心拍数と運動時間を自動記録
アプリ上で「1分でも動いた日」が可視化されると、
不思議と “空白を作りたくない” という心理が働きます。

これは「カラーバー効果」と呼ばれ、
連続記録が続くことで脳が “途切れるのが気持ち悪い” と感じる現象。

気づけば、“やらなきゃ” ではなく “消したくない” が動機になっていました。
この小さな心理設計が、モチベーションより強力だったのです。

出典:The goal-gradient hypothesis and maze learning
The Goal-Gradient Hypothesis Resurrected: Purchase Acceleration, Illusionary Goal Progress, and Customer Retention

仕組み②:行動トリガーで “考えずに動く”

次に意識したのは「トリガー(行動のきっかけ)」です。

「駅の階段を見たら上がる」「エレベーターの前で一呼吸置く」など、
考えずに動ける条件反射” を生活の中に埋め込みました。

この仕組みは、心理学でいう実行意図(Implementation Intention)。
「いつ・どこで・何をするか」を事前に決めておくことで、行動の成功率が格段に上がるとされています。

私はこれを “ミニルール” として日常に組み込み、
身体が勝手に動く仕組みを整えていきました。

出典:Implementation intentions: Strong effects of simple plans

仕組み③:完璧を求めず “信頼” を積む

そして最も大切だったのが、自分を責めない設計です。

できた日は「今日も登れた」と記録し、できなかった日は「休息日」として記す。
“続けられたか”ではなく、“続けようとしたか”に目を向ける

この柔軟な考え方が、意志の摩耗を防ぎました。

心理学ではこれを「自己効力感(Self-efficacy)」と呼びます。
できた体験を積み重ねることで、“自分は続けられる人だ” という信頼が育つ

完璧ではなく 信頼の積み上げ” を目標にすることで、
継続が「義務」ではなく「自然な習慣」に変わっていきました。

習慣は “努力の自動化” で完成する

気づけば、階段の登り降りは「やるもの」ではなく
やらないと落ち着かないもの」になっていました。

それは行動が完全に自動化(オートメーション化)された状態。
歯を磨くように、意識せずとも身体が動く

習慣とは、意志や気合いの積み重ねではなく、
努力を無意識に変える “静かな構造” です。
この自動化こそ、10年間の継続を支えた見えないメカニズムでした。

まとめ:階段の登り降りがくれた「静かな自信」

10年間階段の登り降りを続けてきて思うのは、
“続ける” とは決して特別な才能ではないということです。

やる気がなくても、忙しくても、気づけば身体が自然に動いている
その繰り返しの中で生まれたのは、派手な達成感ではなく、静かな自信でした。

数字で見れば、体重は−13 kg、心拍数も安定し、血液データも改善しました。

でも、本当の変化は「自分を信じられるようになったこと」。
昨日より少しだけ身体が軽く、呼吸が深くなった。

その小さな体感が、明日もまた動こうという原動力になります。

人は「変わる」瞬間を求めがちですが、
実際に人生を動かすのは、“変わらず続けた時間 の方です。

階段の登り降りは、そのことを静かに教えてくれました

地味で、誰にも見られない努力の先にこそ
自分を支える“軸”が育つのだと思います

だからこそ、あなたに伝えたいのは ―
最初の一段で十分だということ。

一気に登らなくてもいい。
1日に数段、呼吸を感じながら登るだけで、
身体も心も、少しずつ確かに変わっていく

今日、あなたの一段目から。
それがきっと、10年後の “静かな自信” につながるはずです。

おことわり

本記事は、筆者が10年間にわたり実践してきた「階段の登り降り」をもとに、その経験と計測データを記録・分析した内容をまとめたものです。

記載している数値・体験・効果の感じ方には個人差があり、すべての方に同様の結果を保証するものではありません。

また、記事内で触れているデータや科学的知見は、公開されている研究・論文・文献をもとに一般的な健康情報として解説しています。

医療行為・診断・治療を目的としたものではありません。

持病や体調に不安のある方は、運動を始める前に必ず医師や専門家にご相談ください。

本記事は「継続のプロセス」を共有し、読者が自分に合った無理のない方法で健康を育むきっかけになることを目的としています。

階段の登り降りは安全な運動ですが、転倒・段差・過度な負荷には十分ご注意ください。

本記事で使用した画像はNapkin AIを利用しています。

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この記事を書いた人

“じみ” に “もくもく” と “すきなこと” を “継続する” ことが最近の楽しみです。

『人生を自由に楽しく』が目標です。

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