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はじめるたびに終わっていた、あの頃の話
運動は、何度も始めてきました。
ランニングシューズを買い、アプリを入れ、最初の数日は順調に体を動かす。
けれど三日もすると、忙しさや疲れを理由にやらなくなる。
そして、やらなくなった自分にがっかりする。
「また続かなかった」
その言葉を、何度も自分に向けてきました。
40代に入ってからは特に、身体の変化がはっきりしてきます。
それでも、運動は続かない。
続けられないのは、意志が弱いから。
そう思っていました。
だからこそ、「今度こそ本気でやろう」と決意を固める。
けれど、やる気はいつも長くは持ちませんでした。
あるとき、ふと疑問が湧きました。
- 本当に問題は “意志の弱さ” なのだろうか、と。
もし意志がすべてなら、忙しい人ほど運動は続かないはずです。
けれど現実には、忙しくても習慣にしている人がいる。
その違いは何なのか。
- もしかすると、続かなかったのは性格のせいではなく、仕組みのせいなのではないか。
- 「頑張る前提」で設計していたから、頑張れなくなった瞬間に崩れていただけなのではないか。
そう考え始めてから、私は運動のやり方を変えるのではなく、
“続け方の構造” を変えることに目を向けるようになりました。
そして気づいたのです。
私が続けられなかったのは、体力の問題でも、根性の問題でもなかった。
ただ、「強い自分」を前提に設計していただけだったのだと。
では、強くなくても続く形とは何か。
なぜ階段の登り降り習慣だけは、
静かに、しかし確実に続いていったのか。
その話を、ここから始めます。
続かなかった頃の自分がやっていたこと

ここからは、少しだけ過去の話をします。
続かなかった理由を「精神論」ではなく、構造として整理してみます。
やる気に頼っていた
当時の私は、運動を「やる気」で始めていました。
その代わり、疲れている日や忙しい日は簡単にゼロになります。
人間の行動は、思っている以上に感情に左右されます。
そして感情は、安定しません。
実際、習慣形成の研究では「モチベーションは変動する前提で設計する必要がある」と示されています。
たとえば、行動科学の分野では “環境設計” が行動継続に与える影響が繰り返し示されており、意思よりも環境が行動を決める割合が大きいとされています。
さらに、運動習慣の継続率は想像以上に低いことも知られています。
World Health Organization(WHO)の報告でも、世界的に身体活動量が不足している成人は多く、特に中高年層では継続が大きな課題とされています。
つまり、続かないのは珍しいことではありません。
それでも当時の私は、「続かない=自分が弱い」と解釈していました。
やる気が出ない日は、自分を責める。
その繰り返しでした。
出典:How are habits formed: Modelling habit formation in the real world
WHO – Physical activity
WHO guidelines on physical activity and sedentary behaviour
Global status report on physical activity 2022
目標を大きくしすぎていた
もうひとつの失敗は、「最初から理想を目指したこと」です。
目標自体は悪くありません。
問題は、“今の自分”との距離でした。
運動を始めるとき、人は未来の理想像を基準に計画を立てがちです。
しかし、習慣化研究では「成功体験の積み重ね」が継続の鍵だとされています。
最初のハードルが高すぎると、達成感を得る前に脱落します。
40代の身体は、20代とは違います。
身体の変化を無視した目標設定は、意欲より先に疲労を生みます。
実際、過度な運動はストレスホルモン(コルチゾール)の上昇を招き、かえって継続を妨げる可能性も指摘されています。
つまり私は、「未来の自分」に合わせた計画を、「今の自分」に強いていたのです。
それでは続かなくて当然でした。
出典:Self-efficacy: The exercise of control
Exercise and circulating cortisol levels: the intensity threshold effect
道具を軽視していた
そしてもうひとつ、見落としていたことがあります。
「記録」です。
なんとなく運動して、なんとなく終わる。
数字も見ない。変化も確認しない。
感覚だけに頼っていました。
しかし運動の効果は、目に見えるまでに時間がかかります。
どれも数週間単位でゆっくり現れます。
数値で見えない変化は、「やっている意味があるのか?」という疑問を生みます。
Persistent-Wins でも以前書きましたが、
心拍数を把握することで運動強度を客観視でき、継続の安心感につながります。

さらに、日常活動の積み重ねが代謝に与える影響については、NEAT(非運動性熱産生)の概念が有名です。

大きな運動よりも、小さな積み重ねの方が現実的。
しかし当時の私は、「道具なし・記録なし・気合のみ」という、
最も不安定な方法を選んでいました。
続かなかったのは、能力の問題ではなかった
ここまで振り返ってみると、はっきりします。
これはすべて、「強い自分」を前提にした設計です。
けれど40代は、仕事も家庭も責任が増える時期です。
エネルギーは限られています。
だからこそ必要だったのは、
頑張る仕組みではなく、
頑張らなくても動ける仕組みでした。
階段の登り降り習慣が続いた理由は、特別な根性が芽生えたからではありません。
構造を変えただけでした。
次は、その構造について整理していきます。
習慣が続いた理由は「気合」ではなかった

ここからが本題です。
階段の登り降り習慣が続いた理由は、
「やる気が出たから」ではありません。
むしろ逆でした。
やる気に頼らない形に変えたことが、継続につながりました。
習慣は “意思” ではなく “摩擦” で決まる
行動科学では、「人は楽なほうに流れる存在」であることが前提とされています。
意志が弱いから流されるのではありません。
人間の脳はエネルギーを節約する構造になっているからです。
この考え方は、行動デザイン理論でも繰り返し示されています。
たとえばスタンフォード大学の行動科学者BJ・フォッグ博士の研究では、
行動は「モチベーション × 能力 × きっかけ」で決まると整理されています。
ここで重要なのは「能力」、つまりやりやすさです。
階段の登り降りはどうでしょうか。
摩擦が小さい。
これが大きな違いでした。
以前の記事でも書きましたが、
階段の登り降りは有酸素運動と筋刺激の中間に位置する、効率の良い活動です。

激しい運動ではない。
けれど確実に身体に刺激が入る。
“ちょうどいい負荷” というのも、摩擦を下げる要素でした。
出典:Thinking, Fast and Slow
A behavior model for persuasive design
続いた理由は「判断を減らした」こと
以前の私は、毎日こう考えていました。
この “判断” が、消耗を生んでいました。
心理学では「決定疲れ(decision fatigue)」という概念があります。
人は1日にできる意思決定の回数に限界があり、判断を繰り返すほど自制心が低下すると言われています。
仕事や家庭で判断を重ねる40代にとって、
「運動するかどうか」という追加の決断は、思っている以上に重い。
階段の登り降り習慣は、その判断を消しました。
この二択を、最初に決めてしまう。
「基本は階段」と決めたら、毎回悩まない。
判断を減らすことは、意志力の節約です。
運動継続に関しては、American College of Sports Medicine(ACSM)も、
「無理のない頻度と日常化が継続の鍵」と提言しています。
特別なトレーニングよりも、
生活の中に組み込まれた活動のほうが続きやすい。
それは理論でもあり、実感でもありました。
出典:Ego depletion: is the active self a limited resource?
ACSM’s Guidelines for Exercise Testing and Prescription
頑張らなくていい構造を作った
もうひとつ大きかったのは、「成果」を追いすぎなかったことです。
けれど階段の登り降り習慣では、
“やったかどうか” だけを基準にしました。
実際、私は健康診断の数値で改善を確認しました。

また、階段運動には運動後過剰酸素消費(EPOC)の効果も期待できます。
いわゆる “アフターバーン” と呼ばれる現象で、運動後もしばらく代謝が高い状態が続きます。

重要なのは、「劇的」ではないこと。
この小さな体感が、次の日につながる。
ただ、“そこにある行動” として続ける。
階段の登り降り習慣が続いた理由は、
私が強くなったからではありません。
強くなくても動ける形に変えただけでした。
次は、具体的に「意志力を使わずに」やった3つのことを整理します。
私が “意志力を使わずに” やった3つのこと

ここまで読んでくださった方なら、もうお気づきかもしれません。
やったことは、
意志力を使わなくても回る形に変えただけです。
ここでは、その具体策を3つ整理します。
1:記録を “自動化” した
以前の私は、記録をしていませんでした。
曖昧でした。
曖昧な努力は、曖昧な手応えしか生みません。
そして曖昧さは、不安につながります。
そこで私は、記録を自分で管理するのをやめました。
スマートウォッチを使い、
を自動で測るようにしました。
理由はシンプルです。
考えなくて済むから。
この「可視化」は、科学的にも継続を後押しします。
自己モニタリングは行動変容の基本戦略のひとつであり、多くの研究で有効性が示されています。
(例:行動変容理論におけるセルフモニタリング)
- 気づきを生む:
- 無意識の行動を意識化できる。
- 自己効力感を高める:
- 「できた」という成功体験を確認できる。
- フィードバックが働く:
- 修正や調整がしやすくなる。
また、運動強度を心拍数で把握することは、安全性と効果の両立にもつながります。

選ぶ基準は難しくありません。
高機能である必要はありません。
“記録を自動で残せる” ことが最優先です。
私が使っているモデルはこちら(参考)
道具に頼るのは甘えではなく、
摩擦を減らすための設計です。
出典:Effective techniques in healthy eating and physical activity interventions: a meta-regression
2:やる気が落ちた日は “音” に助けられた
階段を無音で登り降りすると、
息の上がりや太ももの重さが、そのまま意識に入ります。
最初はそれが「きつさ」に感じられました。
けれど続けていくうちに、
それは “身体からの報告” だと分かるようになりました。
無音は、ごまかしがききません。
だからこそ、身体と対話できます。
この感覚は、実はとても大切です。
運動強度を主観的に把握する力(RPE)は、安全に続けるための重要な指標だからです。
ただ、毎日それに正面から向き合えるわけではありません。
そんなときは、少しだけ注意を分散させます。
心理学では「注意の分散(distraction)」が、主観的な疲労感をやわらげることが示されています。
運動中に意識を身体感覚以外へ向けることで、きつさの感じ方が変わることはスポーツ科学でも知られています。
私は特別な道具は使っていません。
代わりに、
そうやって、意識の焦点を少し動かします。
どちらも正解です。
大切なのは、
「きついからやめる」ではなく、
“どう向き合うかを選べる状態” を作ること。
やる気は、常に一定ではありません。
だからこそ、感覚と分散のあいだで調整する。
それが、三日で終わらなかった理由のひとつでした。
出典:Psychophysical bases of perceived exertion
Attention focus during physical effort: The mediating role of task intensity
The effects of sensory deprivation and music on perceived exertion and affect during exercise
3:「続けよう」と決めない仕組みを作った
最後に、一番大きかったこと。
私は「続けよう」と決めませんでした。
代わりに決めたのは、
“基本は階段を使う” という一行だけでした。
エレベーターではなく階段を選ぶ。
それだけ。
この小さな選択の積み重ねが、
結果的に運動量を底上げしました。
以前の記事でも触れましたが、
日常活動の積み重ね(NEAT)は総消費エネルギーに大きく関与します。

さらに階段は、下半身の大筋群を使うため、代謝維持にも有効です。

ただ、今日もまた階段を選ぶ。
階段の登り降り習慣が続いた理由は、
努力量が増えたからではありません。
それだけでした。
次は、この習慣が向いている人・向いていない人について整理してみます。
階段習慣が向いている人・向いていない人:40代の運動が続くタイプとは

どんな習慣にも、相性があります。
階段の登り降り習慣は万能ではありません。
だからこそ、ここで一度整理しておきます。
向いている人
1:運動が続かない経験がある人
何度も始めては終わってきた。
その経験がある人ほど、この方法は機能します。
なぜなら、前提を「頑張る」から「摩擦を減らす」に変えるからです。
三日坊主を繰り返した人は、
すでに “意志力モデル” の限界を知っています。
だからこそ、構造を変える意味が理解しやすい。
2:意志力を信用していない人
「やる気が出たらやろう」は、
もう何度も失敗してきた。
そう感じているなら、相性は良いです。
階段の登り降り習慣は、やる気がなくても成立します。
生活の中にすでにある行動だからです。
3:40代以降で、健康を “維持” したい人
劇的に痩せたいというより、
将来の自分のために整えたい。
その感覚がある人に向いています。
40代以降は、筋肉量の低下(サルコペニア)や基礎代謝の減少が徐々に進みます。
階段は下半身の大筋群を使うため、
筋量維持の観点でも合理的です。

さらに、階段の登り降りは心肺機能への刺激にもなります。

大きく変えるというより、
少しずつ落ちにくい身体を作る。
その視点を持てる人には、静かに効いてきます。
向いていない人
1:短期間で劇的な結果だけを求める人
「1か月で−5kg」
「すぐに見た目を変えたい」
その期待が強いと、物足りなく感じるかもしれません。
2:気合論が好きな人
追い込む感覚が好き。
汗だくで達成感を得たい。
それ自体は否定しません。
けれど階段の登り降り習慣は、
「物足りない」くらいから始まります。
物足りなさを受け入れられないと、
途中で強度を上げすぎてしまいます。
3:完璧主義が強い人
毎日やらないと意味がない。
できなかった日は失敗だ。
そう考えてしまうと、継続は難しくなります。
階段の登り降り習慣は、
「抜けてもいい前提」で設計されています。
やらない日があっても、
次の日にまた階段を選べばいい。
その柔らかさが、長く続く理由です。
続けられたのは、自分が強くなったからではない
ここまで読んでいただいて、
気づくことがあるかもしれません。
階段の登り降り習慣は特別な方法ではありません。
特別なのは、
“強くなくても回る設計” に変えたことです。
それだけで、
運動は「挑戦」ではなく「日常」になります。
次は、この習慣をどう位置づけるかをまとめます。
まとめ:強くなったのではなく、設計を変えただけ

運動が続くようになったのは、
私の意志が強くなったからではありません。
時間ができたわけでも、
特別な根性が身についたわけでもありません。
変えたのは、たったひとつ。
「強い自分」を前提にしない設計にしたことでした。
それだけです。
階段の登り降りは、特別な運動ではありません。
けれど、
という点で、40代の身体にはちょうどいい刺激になります。
そして何より大きいのは、
「続いている」という事実そのものです。
それだけで、自分への評価は変わります。
もし今、
「また続かなかったらどうしよう」
と不安に思っているなら、
覚えておいてほしいことがあります。
それは、戦略です。
▶ 記録を自動化したい方へ(参考)
強くなくても続く形を作る。
その結果、気づけば強くなっている。
階段は今日もそこにあります。
だからこそ、
今日も一段だけ、登ってみませんか。
大きな決意はいりません。
ただ、エレベーターの代わりに階段を選ぶだけです。
その一段が、
三日で終わらない習慣の始まりになるかもしれません。
おことわり
本記事は、私自身の体験と一般的な運動生理学の知見をもとにまとめたものです。
効果や変化のあらわれ方には個人差があります。
体調に不安のある方、持病や関節・心臓に関する疾患をお持ちの方は、必ず医師にご相談のうえ実践してください。
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ご紹介している道具は、私が「考えなくて済む環境を作る」という観点で選んだものです。
購入を強く勧めるものではありません。ご自身の生活に合うかどうかを基準に、無理のない範囲でご検討ください。
本記事で使用した画像はNapkin AIを利用しています。
