この記事の要点:
健診の結果表で、いつも見ていたのは体重と肝機能、
そしてLDLコレステロールでした。
血色素量という欄があることは知っていましたが、
その数字を気にかけたことは、20年間で一度もありませんでした。
先日、階段の登り降りを11年続けても動かなかった数字(LDL)の話を書きました。

今回はその続きです。
動かなかった数字の隣に、
1度も見ていなかった数字が、静かに並んでいました。
41回の健診で、一度も引っかからなかった数字

血色素量(ヘモグロビン、Hb)は、
血液の赤い色のもとになっているタンパク質の量です。
酸素を身体のすみずみまで運ぶ役割を持っていて、
この値が基準を下回った状態が、いわゆる貧血と呼ばれます。
手元に残っていた健診報告書と、
病院が発行してくれた過去の記録を突き合わせると、
2006年から2026年まで、41回分の血色素量が揃いました。
じつは今回、長年健診を受けてきた病院に、
過去の記録を出してもらえないかと相談してみました。
すると、20年あまりの検査結果が一覧になって届きました。
手元の報告書から自分で拾っていた数字と、
病院の記録が重なる24回分は、すべて一致。
20年分の数字は、思っていたよりずっと確かな形で、
残っていてくれました。
並べてみて、最初に分かったことはシンプルでした。
20年間・41回、1度も貧血の判定を受けたことがないのです。
いちばん低かった値でも 13.9 g/dL。
基準の下限である 13.1 を、1度も下回っていませんでした。
古い記録には、MCVという項目も残っていました。
赤血球1個の大きさを表す数値で、
鉄分が足りなくなると赤血球が小さくなるため、
貧血の背景を推し量る手がかりになります。
2006〜2009年の私の値は 87〜92。
基準の真ん中あたりで、
鉄が不足していた気配は見当たりませんでした。
それだけの話なのですが、
「異常なし」の欄にも20年分の記録が積もっていたことに、
並べてみるまで気づいていませんでした。
出典:血色素(ヘモグロビン)の検査結果|健診会 東京メディカルクリニック
並べて初めて見えた、夏低・冬高の波

LDLの記事を書いたとき、ひとつの作法を学びました。
というものです。
血色素量にも、同じ波がありました。
41回のうち、低かった値を順に並べると、
低い値は、きれいに夏へ集まっていました。
一方、冬(2月前後)の値はおおむね 15 台で、
20年間の最低でも 14.8 でした。
直近3年の、冬から夏への動きを並べてみます。
| 年 | 冬(2月) | 夏(8月) | 差 |
|---|---|---|---|
| 2024年 | 15.0 | 13.9 | −1.1 |
| 2025年 | 15.2 | 14.5 | −0.7 |
| 2026年 | 15.4 | 14.5 | −0.9 |
1回分の結果だけを見ていたら、
「今年は下がった」と受け取っていたかもしれない動きが、
並べてみると、規則正しい呼吸のようでした。
これは私の身体だけの癖ではないようです。
健康な非喫煙男性を夏と冬で比べた研究では、
夏に血漿量(血液の水の部分)が約 5.5 % 増え、ヘモグロビン濃度とヘマトクリット値が下がっていました。
汗をかく季節は血液の水分が増え、
同じ血液でも濃度としては薄まって見える、ということのようです。
2月の健診で 15.4 だった数字が、8月に 14.5 になっていても、
それは「下がった」のではなく「季節が違う」だけかもしれない。
LDLで学んだ作法が、そのままここでも生きていました。
冬は2023年に段差、夏はそれ以前からじわじわ

同じ季節同士で並べ直すと、
もうひとつの模様が見えてきました。
冬の値は、2010年から2022年までおおむね 15.0〜16.3 で、
平均すると 15.6 前後。
それが2023年の冬に 14.8 へ、段差のように下がり、
以降は 15.0 → 15.2 → 15.4 と、少しずつ戻ってきています。
一方、夏の値はもっと早くから動いていました。
2015年8月の 15.4 を境に、14.7、14.8、14.5、14.2 と、
ゆるやかに下がり続け、2024年8月の 13.9 で底を打ち、
直近の2026年8月は 14.5 でした。
ひとつの「低下」ではなく2層の動きに見えます。
念のため書き添えると、
これらはすべて基準範囲の内側での話です。
もうひとつ、細かな観察を添えておきます。
血の濃さを映す数字は、血色素量のほかに
赤血球数とヘマトクリットがありますが、
この3つは私の記録の中で、ほぼ同じ波を描いていました。
いちばん低かった2024年8月は、
赤血球数 470万、ヘマトクリット 40.7 % と、
3つが揃って低めに出ています。
どれか1つだけが動いているわけではない、
という点は覚えておこうと思います。
29歳の16.5は、もう出ない数字
41回の中で生涯最高だったのは、
2007年、29歳の雇入時健診で記録した 16.5 でした。
以来、その数字には一度も届いていません。
少し寂しい気もしますが、
20年分を並べると、これは下り坂というより、
別の水準に移って落ち着いた、という見え方をします。
LDLのときに覚えた距離感と、同じでした。
医師に聞いてみたい仮説(断定はしない)
ひとつ、気になる研究があります。
持久的な運動を続ける人では血漿量が大きく増え、血液中のヘモグロビン濃度が見かけ上低くなる、
という報告です。
「アスリートの偽性貧血」と呼ばれ、
赤血球そのものが減っているわけではないため、
病気ではなく身体の適応と考えられています。
1991年の研究では、
持久系の男性アスリートは血漿量が運動をしない人より約 37.5 % 多く、ヘモグロビン濃度の低下は主に希釈によるもの、
と報告されていました。
血液が薄まるというと悪いことのようですが、
血の量そのものが増えてめぐりが良くなる、
持久的な運動への備えなのだそうです。
私の夏の値がじわじわ下がり始めた時期は、
階段の登り降りを始めた時期と、おおまかには重なります。
と考えたくなります。
ただ、ここで立ち止まります。
研究の対象は本格的な持久系アスリートで、
私の階段登り降り程度の運動量で同じことが起きるのかは分かりません。
この間には減量もあり、食事の変化もありました。
だからこれは結論ではなく、
次の健診で医師に聞いてみたい仮説として、
ポケットに入れておくことにします。
- 次の冬、2027年2月の値がどう出るか。
- 段差のあとの回復が 15.4 の先へ続くのか、
- それとも、このあたりで落ち着くのか。
答え合わせを急ぐつもりはありませんが、
健診の結果が少し楽しみになっている自分がいます。
20年間読み飛ばしてきた欄に、初めてのことです。
貧血という言葉の重さ:この記事が言わないこと

ここまで、貧血がなかった話を書いてきました。
だからこそ、書いておきたいことがあります。
身体のどこかに原因が隠れていることがあるためで、
様子を見たり、運動や食事で何とかしようとしたりせず、
まず医療機関で原因を調べてもらう必要があります。
また、女性は基準範囲そのものが異なります
(一般的に 12.1〜14.5 g/dL とされています)。
貧血の原因は、鉄分の不足だけではありません。
食事を変えたりサプリメントを足したりする前に、
なぜ下がったのかを確かめる。
この記事は「階段の登り降りで貧血が良くなる」
という話ではありません。
むしろ貧血の状態で階段を登るのは、
めまいや転倒につながりかねない行為です。
順番は、まず医師へ。
運動の話は、それからです。
私は見ていなかったが、制度はずっと見ていた

41回分の記録を眺めていて、
面白いことに気づきました。
出典の約半分が「電離放射線健康診断」なのです。
私は診療放射線技師として働いています。
放射線を扱う仕事に就く人は、法律で年2回、
血液検査を含む特殊な健診を受けることが義務づけられています。
血液は放射線の影響が現れやすい場所のひとつだからです。
受ける側にとっては、毎年の決まりごとにすぎません。
正直にいえば、面倒だと感じた年もありました。
それでも針は年2回、確実に刺さり、
数字は確実に、どこかに記録されていきました。
つまり、私が一度も気にかけていなかった20年間、
制度のほうは年2回、休まず私の血液を見てくれていました。
41回分の数字が欠けずに残っていたのは、
私がまめだったからではなく、
この仕組みの上で働いてきたからでした。
20年分の数字は、その両方でできていました。
健診 20 年シリーズの 3 本目は、一度も気にかけなかった数字ではなく、見ていたのに動かなかった数字の話です。
肝臓の数値20年:ALT 93 から 16 へ

一度も気にかけなかった数字が、もうひとつありました。
尿酸 7.3 から 5.5 までの14年です。

まとめ:見ていなかった数字も、積み上がっていた

気にかけるとは、毎日見つめることではないのかもしれません。
それだけでも、見えてくるものは十分にありました。
1度も引っかからなかった数字にも、
階段の登り降り朝活は、これからも続けます。
数字のほうは、次の健診まで気にかけすぎず、
でももう、読み飛ばさずにいようと思います。
日々の小さな記録は、noteのマガジンにも静かに綴っています。
おことわり
本記事は情報提供を目的としており、特定の効果・効能を保証するものではありません。
健康に関するご判断は、必ず医師・専門家にご相談ください。
本記事で使用した画像はNapkin AIを利用しています。

コメント