ダイエットだけではない! 脳の健康にも驚きの効果
私も40代で13 kgのダイエットに成功した階段の登り降りダイエット。この日常的な習慣が、単なる体重減少を超えて、脳の健康にも驚くべき効果をもたらすことが分かってきています。階段の登り降りというシンプルな運動が、認知機能の向上と認知症予防にも寄与するかもしれません。
階段の登り降りは有酸素運動として脳に豊富な酸素を供給し、脳細胞の活性化を促進します。さらに、階段登り降りなどの運動は、骨を刺激して記憶力の向上にも寄与すると言われています。
本記事では、40代からでも始められる階段の登り降りがもたらす驚くべき脳への効果を詳しく解説します。日々の生活に簡単に取り入れられるこの習慣で、身体も頭脳も若々しく保つ秘訣をご紹介します。年齢を重ねても、健康的で活力ある生活を送りたい方必見の情報満載でお届けします。
階段登り降りの身体的メリット
13 kgダイエットと血液データ改善の詳細
私は現在40代後半、身長172 cmの男性です。30代後半には体重 83 kgとメタボリックシンドローム予備軍の状態でした。そこから階段の登り降りを始め、2024年には体重 70 kgまで減らすことができました。ここまでの体重や血液データの変化の詳細は以下の記事をご覧ください。
階段の昇り降りと脳の活性化
階段の昇り降りは、認知症予防とダイエットを同時に叶えることが期待できる効果的な運動方法です。この運動が脳に与える好影響について、有酸素運動としての側面と脳血流増加のメカニズムの観点から説明します。
有酸素運動としての階段の昇り降り
階段の昇り降りは優れた有酸素運動の1つです。この運動は、全身の筋肉を使い、心拍数を上げ、酸素消費量を増加させます。定期的に階段の昇り降りを行うことで、心肺機能が向上し、脳への酸素供給が改善されます。これにより、脳細胞の活性化と神経細胞の保護が促進され、認知機能の維持・向上に寄与します。さらに、この運動は日常生活に容易に取り入れられるため、継続的な実践が可能です。
脳血流増加のメカニズム
階段の昇り降りによる脳血流の増加は、認知機能の改善に直接的に関与します。運動中、脳は活発に働き、より多くの酸素と栄養を必要とします。これに応じて、脳内の血管が拡張し、血流量が増加します。増加した血流は、脳細胞に十分な酸素と栄養を供給し、神経細胞の新生(ニューロジェネシス)を促進します。
また、運動による脳由来神経栄養因子(BDNF)の分泌増加も、神経細胞の保護と新生に貢献します。これらの作用により、脳の可塑性が高まり(脳が環境の変化に適応し、新しい技能を習得し、損傷からの回復を可能にすること)、認知機能の向上と認知症リスクの低減が期待できます。
出典:認知症予防に効果的なトレーニングとは? おすすめの運動や脳トレ、長く続けるためのポイントを紹介
神経細胞の新生(ニューロジェネシス)
ニューロジェネシスとは、脳内で新しい神経細胞が生成されるプロセスを指します。かつては、成人の脳では新しい神経細胞は作られないと考えられていましたが、現在では特定の脳領域で継続的に新しい神経細胞が生まれることが知られています。
主な特徴は:
- 主に海馬(記憶や学習に重要な役割を果たす脳の一部)の中にある歯状回(新しい記憶の形成や空間認知の役割)と脳室下帯(成体脳においても新しい神経細胞を産生し続ける「ニューロン工場」のような役割)で発生します。
- 学習、記憶、気分調節に関与します。
- 運動、環境刺激、ストレス管理などによって促進される可能性があります。
- 特にヒトの大脳新皮質におけるニューロジェネシスの程度については、まだ議論が続いており、さらなる研究が必要とされています。
脳由来神経栄養因子(BDNF)
BDNF(Brain-Derived Neurotrophic Factor)は、脳における最も主要な神経栄養因子の一つです。これは神経細胞の生存、成長、機能を支援するタンパク質です。主な特徴は:
- 神経細胞の生存と成長:BDNFは神経細胞の「生きる力」を支える重要な因子です。
- 生存維持:神経細胞が健康に生き続けるのを助けます。
分化誘導:未熟な細胞が成熟した神経細胞に変化するのを促します。 - 脳の健康と機能を長期的に維持する手助けをしています。
- 生存維持:神経細胞が健康に生き続けるのを助けます。
- 神経伝達の強化:BDNFは脳内の情報伝達を改善します。
- 伝達物質の放出増強:神経細胞間でのメッセージのやり取りを活発にします。
受容体機能の向上:神経細胞が他の細胞からの信号をより敏感に受け取れるようにします。 - 脳内のコミュニケーションがスムーズになり、情報処理能力が向上します。
- 伝達物質の放出増強:神経細胞間でのメッセージのやり取りを活発にします。
- 神経可塑性の促進:BDNFは脳の「柔軟性」を高めます。
- シナプスの再構成:神経細胞同士のつながりを強化したり、新しいつながりを作ったりします。
回路の強化/消去:使用頻度の高い神経回路を強化し、不要な回路を弱めます。 - 脳が新しい経験や環境の変化に適応しやすくなります。
- シナプスの再構成:神経細胞同士のつながりを強化したり、新しいつながりを作ったりします。
- 学習と記憶への貢献:BDNFは私たちの学習能力と記憶力を支えています。
- 長期記憶の形成:新しい情報を長期的に記憶として定着させるのを助けます。
学習効率の向上:新しいスキルや知識の獲得をサポートします。 - BDNFは私たちの日常生活における学習や記憶形成に重要な役割を果たしています。
- 長期記憶の形成:新しい情報を長期的に記憶として定着させるのを助けます。
出典:【連載】よくわかるBDNF -基礎から臨床まで-「第1回 BDNF概論」
神経栄養因子
神経細胞の新生とBDNFは、どちらも脳の健康と機能に重要ですが、それぞれ異なる方法で脳に影響を与えます。
認知機能向上への効果
記憶力と集中力の改善
階段の登り降りは、単純な有酸素運動以上の効果があります。この運動は、脳に新鮮な酸素を送り込み、神経細胞の活性化を促進します。その結果、記憶力と集中力が向上します。
定期的に階段の登り降りを行うことで、日常生活での記憶の保持や複雑な作業への集中力が改善され、40代以降の認知機能の維持に役立ちます。
前頭葉の活性化
階段の登り降りは、バランス感覚や空間認識能力を必要とする複合的な運動です。この動作を繰り返すことで、脳の前頭葉が刺激されます。前頭葉は、計画立案・意思決定・問題解決などの高次認知機能を担う重要な部位です。
階段の登り降りによって前頭葉が活性化されることで、問題解決能力や意思決定能力が向上し、日々の生活における認知機能の質が高まります。
出典:運動で認知症予防
記憶力向上に重要な役割を果たす骨由来のホルモン
オステオカルシンの機能と効果
オステオカルシンは、骨芽細胞によって合成されるホルモンです。このホルモンは、骨から血流に乗って全身に運ばれ、特に脳の海馬に作用します。
海馬への影響
オステオカルシンは海馬に到達すると、その機能を高める働きをします。海馬は短期記憶を司る脳の部位であり、新しい記憶の形成と保持に重要な役割を果たしています。
記憶力向上のメカニズム
オステオカルシンが海馬に作用することで、以下のような効果が期待されます:
- 短期記憶の機能向上
- 学習能力の改善
- 認知機能の維持
オステオカルシン分泌の促進
オステオカルシンの分泌を促進するには、骨に適度な刺激を与えることが重要です。最も効果的な方法の1つがウォーキングです。
- 重力による刺激:
- 特に足の骨や背骨に荷重がかかります。
- 振動による刺激:
- 歩行時の振動が骨に適度な刺激を与えます。
これらの刺激により、骨芽細胞が活性化され、オステオカルシンの分泌が促進されます。
階段の登り降りは、ウォーキングと比較して以下の点でさらに優れた運動と言えます。
- 骨に与える刺激量
- 運動強度
- 筋力強化
- 基礎代謝の向上
- 時間効率の良さ
階段の登り降りも、ウォーキングも、骨への刺激は十分に得られる運動ですので、一人一人に合わせた運動を選ぶことが大切です。
階段の昇り降りと認知トレーニングの組み合わせ
コグニサイズとは
コグニサイズは、国立長寿医療研究センターが開発した認知症予防のための手法です。この言葉は「認知」と「エクササイズ」を組み合わせた造語です。
コグニサイズの特徴
- 運動と認知課題の組み合わせ:
- 全身を使う中強度程度の運動と、計算やしりとりなどの認知課題を同時に行います。
- 適度な負荷:
- 運動は軽く息がはずむ程度で、認知課題は時々間違えてしまう程度の難易度が望ましいとされています。
- 脳トレとの違い:
- 単に座って頭を使うだけでなく、全身運動と認知課題を組み合わせる点が特徴です。
期待されるコグニサイズの効果
- 生活習慣病の予防:
- 高血圧症、糖尿病、脂質異常症、虚血性心疾患、脳梗塞の予防に効果があると考えられています。
- 認知症リスクの低下:
- 上記疾患は認知症のリスク因子でもあるため、その予防は間接的に認知症予防にもつながります。
階段登り降りのコグニサイズへの応用
- コグニサイズの概念を階段の昇り降りに応用:
- ダイエットと効果的な認知症予防を同時に実現できます。
- ルールを設定(階段を上る際に3の倍数で足踏みをする、または7の倍数で手をたたくなど):
- 単純な階段の昇り降りに認知的な要素が加わり、脳の活性化が促進されます。
- 階段を下りる際には別のルールを設定するなど、バリエーションを増やす:
- より高い認知機能の向上が期待できます。
階段でできる簡単な脳トレ
- 階段の昇り降り中に簡単な計算問題や言葉遊びを行う:
- 効果的な脳トレーニングになります。
- 課題を自分に課す(階段を上りながら100から3ずつ引いていく、または「あ」から始まる単語を思い浮かべるなど):
- 有酸素運動による身体への良い効果に加えて、脳の前頭前野を刺激し、認知機能の維持・向上に寄与します。
- 階段の数を数えながら昇降する:
- 注意力と記憶力を鍛える簡単な方法として効果的です。
出典:コグニサイズ-認知症予防へ向けた運動-
認知症予防トレーニングを動画付きで紹介|コグニサイズについても
まとめ:シンプルな習慣が体と脳を変える
階段の登り降りは、40代からでも始められる簡単でありながら効率的・効果的な健康習慣です。本記事で紹介したように、日々の階段登り降りは単なるダイエットだけでなく、脳の健康にも多大な恩恵をもたらします。
私が13 kgのダイエットに成功した体験からわかるように、階段を利用した運動は身体的メリットがあります。同時に、有酸素運動としての階段昇り降りは脳血流を増加させ、認知機能の向上や認知症予防、さらには記憶力や集中力の改善、前頭葉の活性化など、脳の若返りにも貢献することが期待できます。
階段の登り降りと認知トレーニングとの組み合わせを実践することで、その効果をさらに高めることができます。この「階段の登り降り習慣+α」は、特別な時間や費用をかけることなく、今日から始められるシンプルなライフハック(仕事や日常生活で役立つアイデアやテクニック、裏ワザ、知恵)です。ダイエット、体力向上、そして脳の健康維持という多面的な効果を同時に得られる点が、この習慣の最大の魅力と言えるでしょう。
早速今日から、エレベーターやエスカレーターの代わりに階段を選ぶことから始めてみませんか? シンプルながら奥深いこの習慣が、あなたの体と脳を大きく変える第一歩となるはずです。
おことわり
本記事は筆者個人の健康診断結果と経験に基づくものです。記載内容は一般的な医療アドバイスではなく、読者の皆様の健康状態については必ず医療専門家にご相談ください。また、本記事の情報は執筆時点のものであり、最新の医学的知見とは異なる可能性があります。