階段の登り降りで、今日も一日が始まる
朝6時半。まだ薄暗く、静寂に包まれた身近な階段を、一段ずつ登るその瞬間が、私の一日を本当に動き始めさせてくれます。診療放射線技師という職業柄、健康には関心が高かった私ですが、40代半ばから意識して取り入れたこの “階段の登り降り朝活” が、ただの運動以上の効果をもたらしてくれると感じています。
階段の登り降りは、特別な道具もジムも必要ない日常の運動。心肺機能や血流、自律神経にさりげなく働きかけ、体を「目覚め」へと導いてくれます。もちろんそれだけでも価値があります。しかしさらに驚くべきは、実はこのシンプルな動きに「認知症予防」や「睡眠の質」へのポジティブな影響が期待できる科学的根拠があるということです。
この記事では、私自身が “階段登り降り朝活” 習慣で感じた変化とともに、脳と睡眠に働く運動のメカニズム、さらに認知機能維持とのつながりについて、医学的・学術的知見からも解説します。たとえ運動習慣がなくても、まず「朝の5分だけ」、試してみませんか?
睡眠と脳の関係:認知症予防と朝の役割

現代人にとって深刻な悩みとなっている「睡眠の質の低下」と、「認知症リスクの高まり」。これらは決して他人事ではなく、特に40代以降は両者がゆるやかに関連し始める傾向があります。
睡眠と認知症リスクの関連性
まず注目すべきは、質の悪い睡眠が認知症リスクを高める可能性があるという点です。眠りの質が低下すると、脳の老廃物を除去するメカニズム(グリンファティックシステムなど)がうまく機能せず、アルツハイマー病の原因物質蓄積を助長する恐れも指摘されています。
一方、定期的な運動は認知症予防に効果的との報告も多数あります。たとえば、メタアナリシスでは、運動習慣のある人々が認知症リスクを28%、アルツハイマー病リスクを45%低下させたという結果もあります。さらに、世界保健機関(WHO)も、運動を認知症の主要な非薬物的予防策として推奨しています。
出典:The Sleeping Brain: Harnessing the Power of the Glymphatic System through Lifestyle Choices
Physical and Mental Activity, Disease Susceptibility, and Risk of Dementia
Preventive Strategies for Cognitive Decline and Dementia: Benefits of Aerobic Physical Activity, Especially Open-Skill Exercise
朝の運動が睡眠の質に与える恩恵
「朝」に運動することには、ただ体を動かす以上の意味があります。2025年の研究によると、朝の有酸素運動(午前6〜8時)が睡眠の質を高め、体内時計を前倒しにする効果が認められました。この結果は、朝活派の立場からも非常に有力なエビデンスです。
また、一般的なレビューでも、定期的な軽~中強度の運動は睡眠の入眠時間短縮、睡眠効率改善、睡眠時間の延長につながるとされています。朝の活動はメラトニン分泌のタイミングと相性が良く、「朝の光+運動」が入眠リズムを整えると考えられます。
出典:Differential benefits of 12-week morning vs. evening aerobic exercise on sleep and cardiometabolic health: a randomized controlled trial
The Effect of Physical Activity on Sleep Quality and Sleep Disorder: A Systematic Review
The Best—and Worst—Times to Exercise for a Good Night’s Sleep
朝の階段昇降がもたらす生活全体への影響
私自身、週2〜3回、40〜50分間の階段の登り降りを習慣にしてから、夜の寝つきの良さが増し、朝の目覚めもスッキリするようになりました。これは科学的にも納得できる、「朝の運動で脳と体が自然に目覚める」という現象です。
特に、朝活習慣としての階段登り降りは、「続けやすさ」「場所を選ばない」「時間を有効活用できる」点で圧倒的に優れた実践策。これをきっかけに睡眠が整い、結果として脳の老化予防にもつながる構造になっています。


なぜ “朝の階段の登り降り” が効果的なのか?

階段運動が持つ “即効の認知と気分への効果”
短時間の階段登り降りには、思いがけない即効性があることが研究で示されています。
例えば、若年成人を対象にした研究では、数分の階段昇降後に認知の切り替え(スイッチング)が向上し、気分も「エネルギッシュ」になると報告されています。
また別の研究では、たった6分の階段登りで、気分と認知パフォーマンスがともに改善されたとの実験結果もあり、性別や普段の運動習慣に関係なく効果が認められました。
これらの結果は、「手軽にできる階段エクササイズでも、脳と気分に良い刺激になる」ことを証明しています。
朝の運動が持つ “リズムを整える力”
朝の運動には、体内時計(サーカディアンリズム)を前倒しにする働きがあります。
2025年の研究によると、朝の運動が睡眠-覚醒リズムを調整し、睡眠の質向上に寄与することが確認されています 。
これは、朝の自然光や運動刺激が「強力な時間同期因子(zeitgeber)」として働くためと考えられます。
さらに、運動が朝の活動リズムに合うことで、日中の覚醒と夜の入眠がスムーズになる効果も期待できます。
出典:The effects of resistance are superior to aerobic exercise in improving delayed sleep-wake phase disorder in male college students
Differential benefits of 12-week morning vs. evening aerobic exercise on sleep and cardiometabolic health: a randomized controlled trial
脳の “目覚め” を促す神経生物学的メカニズム
運動には脳内での神経成長因子(例:BDNF)の増加や血流改善を促す効果があり、脳構造と認知機能の向上につながるとされています。
つまり、朝の階段登り降りは、短時間かつ日常的に脳へポジティブな刺激を与える「認知ウォームアップ」として機能します。
出典:Neurobiological effects of physical exercise
私の朝の習慣に基づく実体験
私自身、週2〜3回、朝6時半過ぎから40〜50分間の階段登り降り朝活習慣を続けていますが、その効果を以下のように感じています:
このような「身体と脳へのポジティブな循環」が、科学的根拠とも整合します。
私の実体験:朝活として続けた変化

私が階段の登り降りを日常に取り入れ始めたのは、約10年前。昼間のちょっとした移動時に、マンションの階段をエレベーターの代わりに使う ―― そんなささいなことが、やがて生活の一部となりました。
そして40代後半に差しかかった頃、年齢とともに感じ始めた体力の衰えや、日中の集中力の波、夜の寝つきの悪さをどうにかしたいと考え、朝に階段の登り降りを行う “朝活” を本格的に始めたのです。現在ではその朝活も1年以上続いています。
朝活を始めた当初から、私は出勤前に40〜50分間の階段の登り降りを行っていました。
場所は身近なの階段。同じ動作を淡々と繰り返します。息が上がり、汗ばむ頃には、体はしっかりと温まり、頭の中の霞がスッと晴れていくような感覚がありました。
最初の1週間でその効果ははっきりと感じられました。
「朝から脳が冴え、体が一日モードに切り替わる」――まるでスイッチが入ったかのような目覚めの良さが、今でも鮮明に記憶に残っています。
続けて見えてきた、睡眠への変化
この朝の習慣を3週間ほど続けて気づいたのは、夜の寝つきがスムーズになってきたことです。以前はベッドに入ってからもスマホを見たり、考え事をしたりして眠れない時間が長く続いていましたが、階段登り降り朝活を始めてからは、体が自然と「眠る準備」に入っているような感覚がありました。
スマートフォンのの睡眠アプリを見ても、深い睡眠(Deep Sleep)の割合がやや増加し、入眠時間も短縮されていました。もちろん個人差はありますが、「朝の運動で一日のリズムが整う」ことは体感としても非常に大きな効果でした。
集中力・メンタルへのポジティブな影響
また、日中の集中力の持続時間も明らかに変わってきました。特に午前中の仕事効率が高まり、午後の眠気が軽減。中〜高強度の有酸素運動で血流が促進された影響だと思われます。
メンタル面でも、「一日のスタートを自分で整えた」という達成感が、不安感や焦燥感を和らげてくれました。これは単に運動効果だけでなく、「自分の生活をコントロールできている」という感覚も関係していると感じます。
無理せず続けられた理由
私がこの習慣をここまで続けられている理由は、「気合も努力もいらない」からです。
この「心理的ハードルの低さ」は、三日坊主を防ぐ最大の要因でした。
成功のコツと注意点
- 無理して階段数を増やさず、1〜2往復から始めること
- 必ず朝の水分補給をしてから行う(軽い脱水予防)
- 疲労感が強い日は昇りだけ、下りはエレベーターでもOK
- 足音などで周囲に配慮した時間帯や場所の選定(特に屋内)
生活にどう取り入れる?:忙しい人でもできる “朝階段活用術”

「朝の階段の登り降りが体にも脳にも良いのはわかった。でも、朝はとにかく時間がない」という声もあるでしょう。実は、私自身も朝に余裕がある日ばかりではありません。
それでも続けられている理由は、「朝の階段登り降りは、1分でも、1往復でも効果がある」ということを体感しているからです。ここでは、忙しい方でも無理なく取り入れられる “現実的な活用法” をご紹介します。
活用法①:「ついで階段」の習慣化
- 出勤時に駅や会社ビルのエレベーターを使わず階段を利用
- マンション・アパートなら1階分だけでも歩く
- ゴミ出し、洗濯物干しなど「家事の移動」と組み合わせる
→ ポイントは「運動しよう」と意識しすぎず、「階段を使ってしまう」状況を作ることです。
活用法②:1分だけの “気分転換昇降”
- 朝食後、家を出る前に自宅や団地の階段を1分だけ昇降
- やる気が出ない日は昇りだけやって下りはやめるのもOK
- タイマーを使って「1分だけ」と決めると継続しやすい
→ 実際、先述の研究でも「6分以下の階段昇降」が認知と気分に有意な効果を示しています。
活用法③:オフィスや施設の階段を「脳のリセット」に使う
- 朝イチの集中スイッチ、昼食後のリフレッシュに使える
- 1時間座りっぱなしなら、トイレついでに1階分階段で移動
- 昇降中に深呼吸を取り入れると、より自律神経が整う
→ 長時間デスクワークの人こそ、階段を “動的マインドフルネス” の場として活用できます。
習慣化のポイント
- 時間帯・階数・スタイルは柔軟にOK(朝できなければ昼でも◎)
- 体力や生活スタイルに応じて自分仕様にカスタマイズ
- Apple Watchや万歩計で可視化するとモチベーション維持にも

まとめ:脳と眠りを整える “朝の一段” が、未来を変える

「脳の健康のために何か始めたい」
「ぐっすり眠れる体を手に入れたい」
そう思っても、運動はハードルが高いし、何から始めればいいかわからない ―― そんな方にこそおすすめなのが、“朝の階段の登り降り” です。
毎朝の5分、1階分の登り降りでも、脳は活性化され、睡眠の質も整い、心まで前向きになる。それは、私自身がこの習慣を通して実感してきたことでもあります。
健康のために何かを始めたいなら、まずは “一段から” で構いません。
今日、いつもならエレベーターを使うその瞬間に、階段を選ぶだけで、一歩前進です。
だからこそ、あなたも明日の朝、1分だけでも「階段」を登ってみませんか?
それが、認知症を遠ざけ、心地よい眠りを取り戻す第一歩になるかもしれません。
おことわり
本記事は、筆者の実体験と公開されている研究論文・公的機関の情報をもとに作成しています。
内容は一般的な健康情報の提供を目的としたものであり、特定の疾病の診断・治療を目的としたものではありません。
階段の登り降りなどの運動を始める際は、体調や既往歴に応じて、無理のない範囲で行ってください。
特に膝や腰に痛みがある方、持病のある方は、事前に医師などの専門家へご相談ください。
記事内の情報は執筆時点のものであり、将来的な研究やガイドラインの変更によって内容が変わる可能性があります。
本記事で使用した画像はNapkin AIを利用しています。
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