階段運動の効果を最大化する鍵は「心拍ゾーン」にあった
階段の登り降り運動は「手軽にできて、短時間でも効く」ことが魅力です。
しかし、実際に取り組んでみると——
- 「どのくらいの心拍数を目指せば効果的なの?」
- 「息が切れるまで登った方がいいの?」
といった疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。
実は、階段運動の効果を決めるのは “心拍数の上げ方” です。
同じ5分間でも、心拍ゾーンが適切かどうかで脂肪燃焼量や持久力への影響が大きく変わります。
本記事では、私が習慣としている階段の登り降りをしながら、実際に測定した心拍データをもとに、
- 「どのゾーンでどんな効果が出るのか」
- 「どこまで上げれば安全か」
を科学的根拠と実体験を交えて徹底解説します。
あなたの目標が「脂肪燃焼」でも「集中力アップ」でも、
心拍ゾーンを理解することが最短ルートです。
まずは、階段の登り降り運動と心拍数の関係から見ていきましょう。
階段運動と心拍数の関係

階段を登ると、わずか数十秒で息が上がり、心拍数が一気に上昇します。
その理由は、階段の登り降りが下半身の大筋群(大腿四頭筋・臀筋・ハムストリング)を同時に動員し、酸素消費量を急激に高める運動だからです。
複数の研究報告では、階段昇降は平地ウォーキングよりも明らかに高いエネルギー消費が求められ、酸素消費量は約2〜3倍に達することが示されています。
また、階段昇降時の心拍数は、同強度の平地歩行と比較して20〜30拍/分ほど高くなる傾向があることも報告されています。
これらの知見はACSM(American College of Sports Medicine)が示す「階段昇降は短時間で強度が上がりやすい運動」という位置づけとも一致しています。
つまり階段の登り降りは「短時間でも有酸素運動の効果を得られる」代表的な活動なのです。
一方で、心拍数が高すぎると酸素供給が追いつかず、無酸素運動(筋力トレーニング的負荷)に移行します。
このラインを超えると、脂肪ではなく糖を主燃料とする代謝に切り替わり、持続的な脂肪燃焼効果が下がることが知られています。
したがって、階段運動の鍵は「心拍数をどのゾーンで維持するか」。
特に40代以降では、安静時心拍数が高まり、最大心拍数が年齢とともに低下するため、強度設定を誤るとオーバーワークや疲労蓄積につながります。
さらに注目すべきは、階段運動が脳の血流を高め、集中力や気分にも良い影響を及ぼすという点です。
海外の研究では、わずかな時間の階段昇降でも、認知課題の成績が有意に向上し、気分状態にも良い変化が見られることが報告されています。
短時間の階段運動が脳の活性化や集中力に寄与するという点で、同様の効果を示した先行研究とも一致しています。
これは、心拍数の上昇が “脳の燃費” を改善する一種の生理反応と考えられています。
つまり、階段の登り降りにおける心拍数の上昇は、
- 有酸素運動としての脂肪燃焼
- 無酸素運動的な筋刺激
- 脳への血流促進
この3つを同時に引き出す「複合的効果のトリガー」なのです。
出典:Energy cost of stair climbing and descending on the college alumnus questionnaire
Health promotion with stair‑ascending exercise
Balance of carbohydrate and lipid utilization during exercise: the “crossover” concept
Age-predicted maximal heart rate revisited
Effects of a Brief Stair-Climbing Intervention on Cognitive Performance and Mood States in Healthy Young Adults
理想的な心拍ゾーンの見つけ方

階段の登り降り運動を効果的に行うためには、まず「自分の最大心拍数(HRmax)」を知ることが出発点です。
一般的には 「220−年齢」 という簡易式で求められますが、近年の研究では、より正確な式として
最大心拍数 = 208 − 0.7 × 年齢 (Tanaka et al.)
が提案されています。
たとえば40歳の方なら、
220式では180 bpm、Tanaka式では約180−0.7×40=180−28=152 bpmが推定最大心拍数となります。
この差は小さいように見えて、実際のゾーン設定では重要な影響を与えます。
米国心臓協会(AHA)によると、運動時の目標心拍数は最大心拍の50〜85%が推奨ゾーンです。
この範囲が「有酸素運動として安全かつ効果的に脂肪を燃やすゾーン」とされています。
出典:Age-predicted maximal heart rate revisited
Target Heart Rates Chart
ゾーン別の目的と効果
最大心拍数に対する割合で、おおまかに次のように分類されます。
| ゾーン (最大心拍数に対する割合) | 目安心拍 (40代男性 Tanaka式) | 目安心拍 (40代男性 220式) | 主な目的・効果 |
|---|---|---|---|
| ゾーン1(50〜60%) | 76〜91 bpm | 90〜108 bpm | ウォームアップ・回復 |
| ゾーン2(60〜70%) | 91〜106 bpm | 108〜126 bpm | 脂肪燃焼・持久力向上 |
| ゾーン3(70〜80%) | 106〜121 bpm | 126〜144 bpm | 心肺強化・集中力アップ |
| ゾーン4(80〜90%) | 121〜137 bpm | 144〜162 bpm | 無酸素運動・短時間筋刺激 |
| ゾーン5(90〜100%) | 137〜152 bpm | 162〜180 bpm | スプリント強度・短時間限界負荷 |
階段の登り降り運動では、ゾーン2〜3の範囲に滞在することが最も効率的です。
このゾーンでは脂肪を主燃料としながら、呼吸循環系が活発に働き、運動後の「EPOC(運動後酸素消費量)」も増加します。
EPOCは、運動後もエネルギー消費が続く “アフターバーン効果” を指し、体脂肪減少や代謝改善に寄与することが報告されています。

出典:Effects of exercise intensity and duration on the excess post-exercise oxygen consumption
ゾーンの見極め方とモニタリング
スマートウォッチを活用すれば、階段を登り降りしている最中でも心拍をリアルタイムに確認できます。
重要なのは、「息が上がりすぎず、会話がギリギリできる程度」の状態を保つこと。
これは研究でも “トークテスト” がゾーン2を的確に反映することが知られています。
私(40代男性)の実測では、階段をやや速いテンポで3〜4階分上がると、心拍数は120〜135 bpmに達し、ゾーン2〜3を維持できるケースが多く見られました。
この範囲は呼吸が深く、疲労感が少ない一方で、血流が促進され集中力が高まる “理想ゾーン” です。
出典:The talk test: a useful tool for prescribing and monitoring exercise intensity
階段でゾーンをコントロールするコツ
- テンポを一定に保つ:早く登るよりも「1段1秒」を意識。
- 休息を挟む:階段1往復ごとに30秒のインターバルで過剰上昇を防ぐ。
- 呼吸をリズム化:「3歩吸って2歩吐く」などで心拍安定。
この3つを意識するだけで、無理なくゾーン2〜3をキープでき、脂肪燃焼・心肺機能・脳活性をバランスよく引き出せます。
実データで見る心拍ゾーン別の効果(運動の記録カテゴリより)

この3年間、筆者はスマートウォッチとアプリで毎回の「階段登り降り」を記録してきました。
ここでは、2024年11月から2025年11月までの9回分の詳細ログをもとに、心拍ゾーンの推移と効果の変化を振り返ります。
| 日付 | 運動時間(分:秒) | 平均心拍数 (bpm) | 最大心拍数 (bpm) | 有酸素運動時間 (分:秒) | 消費カロリー (kcal) |
|---|---|---|---|---|---|
| 2024/11/26 | 40:32 | 127 | 150 | 21:42 | 337 |
| 2024/11/28 | 41:16 | 126 | 149 | 19:13 | 337 |
| 2024/11/30 | 33:59 | 125 | 146 | 14:48 | 267 |
| 2025/04/08 | 51:14 | 128 | 151 | 30:06 | 433 |
| 2025/04/10 | 47:58 | 125 | 154 | 18:10 | 385 |
| 2025/04/12 | 48:33 | 118 | 161 | 14:03 | 345 |
| 2025/11/20 | 61:54 | 123 | 144 | 23:56 | 483 |
| 2025/11/22 | 61:06 | 133 | 181 | 35:28 | 550 |
| 2025/11/25 | 63:26 | 130 | 169 | 24:45 | 550 |
平均心拍・有酸素時間の推移
記録初期(2024年11月)は、平均心拍が125〜127 bpm、最大心拍が150 bpm前後で推移していました。
いわゆるゾーン2〜3(HRmaxの65〜80%)を中心に、20分前後の有酸素滞在時間が確保できていた時期です。
中期(2025年4月)には、平均心拍はほぼ同水準でありながら、有酸素滞在時間が約30分前後に延長(+約9分)しました。
心拍を高く保つための努力感が減り、「同じ階段でも息が上がりにくくなった」という体感が得られるようになっています。
さらに後期(2025年11月)では、平均心拍が130 bpm前後とやや上昇しましたが、有酸素滞在はさらに伸び、最長で35分28秒(2025/11/22)に達しました。
この頃には60分前後の階段の登り降り朝活も定着し、脂肪燃焼と持久力アップのゾーンを長時間キープできるようになっています。
ゾーン適応の証拠:同じ負荷で心拍が安定
注目すべきは、最大心拍のブレ幅が徐々に小さくなっている点です。
初期(2024年11月)は最大150 bpm前後で上下の変動が大きかったのに対し、2025年4月には151〜154 bpm、11月でもほぼ同水準に収まりました。
同じ昇降ペースでもピークが上がりすぎず、平均値が安定しているのは、心肺機能が順応した証拠といえます。
Seiler & Tønnessenも、「ゾーン2中心のトレーニングは心拍効率を高める」と報告しています。
長時間セッションで見えた “ゾーン3の壁”
一方で、後期のデータ(11/22、11/25)では平均心拍が130〜133 bpm、最大心拍が169〜181 bpmと高強度になっています。
消費カロリーは550 kcalを超え、ゾーン3〜4(HRmax80%超)に15分以上滞在したことが確認されました。
この日は達成感がある反面、「脚の重だるさ」や「翌朝の回復遅れ」が見られ、ゾーン3を超える負荷はリカバリーの時間を意識的に取る必要があると感じました。
出典:Effects of exercise intensity and duration on the excess post-exercise oxygen consumption
1年を通じた変化のまとめ
- 平均心拍:125 → 130 bpm(+5 bpm/ペース上昇分)
- 有酸素滞在時間:14〜21分 → 25〜35分(約1.6倍)
- 消費カロリー:267 → 550 kcal(約2倍)
- 最大心拍:146 → 169 bpm(上限の安定)
このデータからわかるのは、階段という限られた環境でも、心拍を意識して運動を継続すれば確実に有酸素能力を高められるということです。
とくにゾーン2〜3を中心に週3〜5回続けることで、
「呼吸が浅くならない」「頭がスッキリする」といった脳疲労対策の副次的な効果も感じられました。

心拍ゾーン別・目的別の階段運動メニュー

ここからは、これまでの実測データをもとに、目的別に心拍ゾーンを使い分けるための階段運動メニューをご紹介します。
同じ階段の登り降りでも、心拍数の上げ方と維持の仕方によって、得られる効果がまったく異なります。
目的①:脂肪燃焼と代謝改善を狙う「ゾーン2」メニュー
ゾーン2(最大心拍の60〜70%)は、脂肪を主要エネルギーとして使う “燃焼ゾーン” です。
呼吸が乱れず、会話ができる程度の強度が目安になります。
私のデータでは、平均心拍125〜128 bpmのセッション(例:2025/04/08、04/10)がこれに該当しました。
このゾーンでは、EPOC(運動後酸素消費)による代謝持続も期待できます。
運動後も1〜2時間はエネルギー消費が高まるため、朝の階段登り降り運動で日中の燃焼効率を高めるのがおすすめです。
出典:Effects of exercise intensity and duration on the excess post-exercise oxygen consumption
目的②:集中力アップ・脳活性化を狙う「ゾーン3」メニュー
ゾーン3(最大心拍の70〜80%)は、呼吸がやや早くなり、集中を要する領域です。
私の場合、平均130 bpm前後・最大心拍160 bpm前後(例:2025/11/25)のセッションがこのゾーンでした。
階段を一定リズムで登り降りしながら呼吸を合わせることで、前頭葉の血流と酸素供給が上昇します。
軽い疲労と引き換えに、運動直後の「頭が冴える」感覚が得られるゾーンです。
米・国立衛生研究所(NIH)の報告でも、中強度の有酸素運動が認知機能・注意力を一時的に高めることが確認されています。
目的③:心肺強化・瞬発刺激を狙う「ゾーン4」メニュー
ゾーン4(HRmaxの80〜90%)は、階段の登り降り運動の中でもっとも強度が高く、短時間のブースト用として使います。
私の記録では、平均心拍130 bpmを超え、最大心拍169〜181 bpm(2025/11/22)が該当しました。
このゾーンでは、乳酸がたまり呼吸が荒くなりますが、短時間で心肺を刺激する効果があります。
強度が高すぎると自律神経に負担がかかるため、週単位でゾーン2とのバランスをとることが大切です。
まとめ:階段は「ゾーン2〜3」で生活を整える最良の運動
1年分のデータからも明らかなように、ゾーン2を中心にした階段の登り降り運動は、
体力向上だけでなく、集中力・睡眠・気分安定など脳機能面にも良い影響をもたらします。
特別な器具やジムがなくても、「心拍を意識するだけ」で運動の質が変わるのです。
心拍モニタリングで階段運動を習慣化する方法


階段の登り降りはシンプルな動作の繰り返しですが、心拍を「見える化」するだけで運動の質が大きく変わります。
ここでは、実際に心拍モニタリングを活用しながら、日常生活に階段運動を定着させるコツをご紹介します。
運動強度を “数値ではなくゾーン” で捉える
最初から心拍数の数値を気にしすぎる必要はありません。
まずは「今日はどのゾーンで動いたか?」という感覚で記録をつけてみましょう。
ゾーン2(会話できる強度)の日を多くすることで、疲労をためずに継続できます。
実際、私の記録では、ゾーン2中心の週が最も回数が安定していました。
同じ階段を使うことで“自己比較”が可能に
階段は、日ごとのコンディション変化を測る絶好のステージです。
同じ階段を使い、同じ時間帯・同じペースで登るだけで、
「今日は心拍が早く上がる」「逆に息が楽になった」といった体調変化を直感的に感じ取ることができます。
これは、体調管理とトレーニング記録を兼ねた“自己計測の習慣”になります。
記録を “見返す” ことで脳の報酬系が働く
スマートフォンのアプリでの運動履歴やグラフを眺めるだけでもドーパミン(達成感ホルモン)が分泌されるといわれています。
研究でも、アプリやデバイスによる “記録の可視化(セルフモニタリング)” は、身体活動の継続や行動改善を有意に高めることが示されています。
特に、フィードバックが視覚的に提示されることで、運動習慣の定着につながりやすいことが報告されています。
週末に過去7日分の心拍ログを見返すだけでも、モチベーション維持に効果的です。
小さな積み重ねを「習慣のご褒美化」する
習慣化の最大のコツは、「できた自分を肯定する」瞬間を増やすことです。
1週間続いたらお気に入りのコーヒーを飲む、1か月続いたら新しいウェアを買うなど、
“階段を登った先にあるご褒美” を設定しましょう。
継続行動は理性よりも報酬回路に支えられています。
まとめ:心拍は「継続のコンパス」

1年分の記録を振り返ってみると、数字の変化以上に、
「体の声を数値で聞けるようになったこと」こそが最大の成果だと感じます。
心拍を測るようになってから、階段を登る “しんどさ” が “リズム” に変わり、
「今日はゾーン2に長くいられた」「昨日より回復が早い」といった小さな発見が積み重なりました。
それは、トレーニングというよりも自分の身体との対話に近い感覚です。
心拍モニタリングは、努力を数字で見せてくれる “静かなコーチ” です。
ペースを上げすぎた日も、体調がいまひとつの日も、
心拍数は常にその日のコンディションを映し出してくれます。
つまり心拍は、続けるためのコンパスであり、
「どこまで頑張ればいいのか」「今日は休むべきか」を教えてくれる指標なのです。
とくに階段の登り降り運動のような身近なアクティビティでは、
数値がそのまま日常の質のバロメーターになります。
朝の階段登り降りで心拍が安定している日は、仕事中の集中力が高く、
逆に上がりすぎる日は睡眠不足や疲労のサインだと気づけるようになります。
この “気づき” が、習慣を持続させる最大の原動力になります。
スマートウォッチやアプリなどのデバイスを活用すれば、心拍の推移や回復傾向をグラフで振り返ることができ、
毎日の階段登り降り運動が「記録」から「成長」に変わっていきます。
過去の自分と比較しながら、心拍の変化を未来の健康資産として積み上げていく —
それが “Persistent Wins(継続が進化を生む)” の真意です。
これから階段運動を始める方も、まずは今日1回、
心拍を測りながら階段を登ってみてください。
その一段一段が、数字に変わり、習慣になり、やがて体調と心の両方を変えていきます。
階段の登り降りという小さな行動の中に、
あなたの身体が本来持っている回復力と進化のリズムが確かに宿っています。
おことわり
本記事は筆者の実測データと既存の科学的知見に基づき、一般的な健康情報として作成しています。
内容は診断・治療を目的としたものではなく、疾病の予防や改善を保証するものでもありません。
運動を始める際は、体調や既往症に応じて、医師または専門家にご相談のうえ実施してください。
また、心拍計などの数値は個人差や測定機器の誤差が生じる可能性があります。
記事内のデータや結果は、あくまで筆者個人の実践記録です。
本記事で使用した画像はNapkin AIを利用しています。
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