階段の登り降りを11年続けた私が、何もないところでつまずいた:脚力とバランスの次にある、第3の力

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何もないところで、つまずきました。

段差も、
障害物も、
濡れた床もない。

ただ平らな場所を、
いつものように歩いていただけです。

足が一瞬引っかかり、身体が前に出て、
次の1歩が、ぎりぎりで間に合いました。

転びはしませんでした。
けれど、胸のあたりに残ったヒヤッとした感触は、
数日たっても消えませんでした。

階段の登り降りを11年続けてきた私にとって、
それは小さな、しかし無視できない出来事でした。

脚は鍛えてきたはずです。
バランスも、そのつもりでした。

それでも、つまずいた。

この記事は、
その1歩をきっかけに考えたことの記録です。

目次

11年、脚は鍛えてきたはずだった

脚力・バランスと転倒予防に必要な力の重なりを示す図解

このブログでは、これまで何度か
「階段の登り降りは転倒予防につながる」と書いてきました。

脚力の記事では、いつまでも自分の脚で歩いていたいと。
バランスの記事では、階段が身体の安定を育ててくれると。

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その考えが間違っていたとは思っていません。

11年の階段は、確かに脚力を残してくれました。

体重も、健診の数値も、
この習慣に支えられてきました。

ただ、あの日の1歩は、こう言っているようでした。

「鍛えてきたもの」と「守ってくれるもの」は、少し違うと。

脚を鍛えていれば、転ばない。
私も、どこかでそう思い込んでいました。

けれど転ばないために必要な力は、
筋力だけではないのかもしれません。

つまずきは、足先だけの問題ではなかった

平らな廊下で靴の先がわずかに床に触れる瞬間のイメージ

つまずきの原因として、
よく挙げられるのが足先の高さです。

歩くとき、
足先は床からほんの数センチしか浮いていません。

そのわずかな隙間が埋まった瞬間、
身体は前に投げ出されます。

足先を持ち上げる筋肉、
すねの前側にある前脛骨筋の話は、以前書きました。

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階段を登るとき、
足先が段に引っかからないように、
この筋肉は毎日働いています。

だから今回、足先だけが原因だとは、
あまり思えませんでした。

あの日、本当に問われていたのは、
引っかかった “後” でした。

前に投げ出された身体を、
次の1歩がどれだけ速く、
どれだけ適切な場所で受け止められるか。

その1歩は、脚力でもバランスでもない、
別の何かで動いている気がしました。

脚力とバランスの次にある、第3の力

脚力・バランス・とっさの1歩の3つの力を並べた図解

転倒の研究には、
その “別の何か” を測る方法があります。

足元にある4枚のパネルのどれかがランダムに光り、
光った場所へできるだけ速く足を踏み出す。
選択ステップ反応時間と呼ばれるテストです。

オーストラリアの研究では、62〜95歳の477人がこのテストを受け、
過去に転倒した人は、していない人より足を出すまでに約0.15秒長くかかっていました。

そしてこの反応時間は、
筋力やバランスを単独で測るより、転倒を予測する指標として重要だったと報告されています。

もうひとつ、興味深い分析があります。

合図に合わせて足を踏み出す “ステップ訓練” を
高齢者に行った7つの試験をまとめたところ、
転倒の発生がおよそ半分に減っていました。

反応時間・歩行・バランスは改善していた一方で、
筋力は変わっていなかったそうです。

筋力が増えなくても、転倒は減る。

つまり転ばないために働いている力のひとつは、
筋力とは別の場所にあるということです。

脚力、
バランス、
そして “とっさの1歩“。

私はこれを、勝手に第3の力と呼ぶことにしました。

ひとつ断っておくと、
これらの研究の対象は60代以上の方々です。
40代の私にそのまま当てはまるかは、分かりません。

ただ、向かう方向は示してくれている気がします。

出典:Choice stepping reaction time: a composite measure of falls risk in older people
Step training improves reaction time, gait and balance and reduces falls in older people: a systematic review and meta-analysis

転ぶ人は、速く歩いていた

つまずき後の転倒要因として歩く速さと前傾を示す図解

もうひとつ、読んで少し姿勢を正した研究があります。

健康な高齢者79人に安全帯をつけ、
歩行中に隠した障害物でわざとつまずかせる実験です。

転んだ人と、踏みとどまった人。

その差を分けた最大の要因は、
反応の遅さではなく、
つまずいた瞬間の歩く速さでした。

速く歩いていた人ほど、転んでいた。

加えて、上半身が前に傾いていた人も転びやすかったと
報告されています。

この結果を読んで、あの日の自分に問いを向けました。

私は、急いでいなかっただろうか。
身体が前に出ていなかっただろうか。

“速さ” が転倒の引き金になりうると知ったことは、
これからの歩き方を少し変える気がしています。

転倒は、ヒヤッとしただけで終わるとは限りません。

厚生労働省の2022年の調査では、
介護が必要になった原因の第3位が「骨折・転倒」(13.9%)でした。
認知症、脳血管疾患に続く数字です。

筋肉は、あとから増やせます。

けれど骨や関節は、
1度の転倒で戻らない損失を受けることがあります。

40代のいま転ばなかったことは、
たぶん、思っている以上に大きな幸運でした。

関節への負担を軽くする登り降りの工夫は、こちらの記事にまとめています。

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出典:「2022(令和4)年 国民生活基礎調査の概況」Ⅳ 介護の状況・表17
Mechanisms leading to a fall from an induced trip in healthy older adults

階段が育てたもの、育てなかったもの

一定のリズムで続く階段を登る人物のシルエット

あの日から、階段を登り降りするとき、
少し違うことを考えるようになりました。

階段の動きは、いつも同じリズムです。

段の高さは決まっていて、
次に足を置く場所も分かっている。

11年、私はその “予測できる反復” を積み上げてきました。
それが脚力とバランスを残してくれたのだと思います。

一方で、とっさの1歩は、
予測できない動きへの反応です。

どこで引っかかるか、
どちらに身体が傾くか、
事前には分からない。

同じリズムの反復は、
この力を育てにくいのかもしれません。

言い切れるほどの根拠は、まだ私にはありません。
ただ、そういう問いが立ったことは確かです。

11年の習慣が万能でなかったと知るのは、
少し寂しくもあります。

けれど、ヒヤッとした一瞬に立ち止まって考えられたのは、
日々身体を動かし、
身体の変化に目を向けてきたからだと思っています。

「気づく力」は、こんなところでも働くようです。

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何を足すかは、これから自分の身体で試していきます。

派手な訓練ではなく、
歩く速さを一段落とすとか、
足の置き場に少しだけ意識を向けるとか。

そういう小さなことを、
自分の言葉で書けるようになったら、
また記事にします。

転倒がなぜ一発の損失になるのか。
戻らない関節の側から考えた記録は、筋肉は戻る、関節は戻らないに置いています。

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まとめ:つまずいた1歩が、次の11年を守る

夕暮れの池に並ぶ飛び石と、少しずれた一つの石

何もないところで、つまずいた。

それだけの話を、ここまで長く書きました。

  • 脚力とバランスの次に、とっさの1歩という第3の力がある。
  • その力は筋力とは別の場所にあり、速さと前傾が転倒の引き金になりうる。

研究が教えてくれたことは、
静かに、しかしはっきりしていました。

11年登っても、つまずく。

それは、11年が無駄だったという意味ではありません。

鍛えてきたものの隣に、
まだ手をつけていない力があると、
教えてもらっただけです。

あの1歩を、ただのヒヤッとした記憶で終わらせず、
次の11年を守る入り口にできたら。

そう思って、今日も階段を登り降りしています。


日々の小さな記録は、noteのマガジンにも静かに綴っています。

ひのとみのいしころ|静かに熱い40代の記録

おことわり

本記事は情報提供を目的としており、特定の効果・効能を保証するものではありません。

健康に関するご判断は、必ず医師・専門家にご相談ください。

本記事で使用した画像はNapkin AIを利用しています。

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