階段の登り降りを11年続けた膝は、守られていたのか、削られていたのか:筋肉は戻る、関節は戻らない

階段の途中で立ち止まり、膝に手を添える人のイメージ
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「関節と筋膜は消耗品で、もう治らない」

そんな言葉を、夏の終わりに読みました。
朝3時45分に起きて、25 km走る人の記事です。

読んだ瞬間に浮かんだのは、
自分の右膝でした。

11年、日々身近な階段を登り降りしてきた膝です。

  • 守られていたのか、
  • 削られていたのか。

今日はその問いを、
答えを急がずに置いてみます。

目次

消耗品、という言葉を聞いた日

階段に腰かけ、膝に手を置いて記事を読む人のイメージ

元ゴールドマン・サックスの田中渓氏がポッドキャストで語った内容を、
朝日新聞の withnews がまとめた記事でした。

40代を過ぎてから本気で運動を始めた人たちは、
口を揃えて言うのだそうです。

関節と、関節と筋肉のあいだの膜は消耗品で、
治らないから先に手入れをしておけ、と。

私は3時45分には起きませんし、
25 kmも走りません。

朝の階段を登り降りして、腕立て伏せを少し。
追い込まない側の人間です。

それでも、この言葉は残りました。
私も11年、膝を使い続けてきたからです。

同じ前提に立って、
別の答えに着いた記録として、
静かに並べてみようと思います。

出典:3時45分に起きて25km走る〝元ゴールドマンサックス〟40代超えアスリートが忠告する体の「消耗品」

なぜ関節は戻らないのか

筋肉と関節軟骨の回復力の違いを表す図解

関節の表面を覆う軟骨には、
血管が通っていません。

血液が届かない組織は、
傷んだあとに修復の材料や細胞を呼び込みにくい。
だから自己修復の力が限られている、

と総説は説明しています。

筋肉は違います。

血管が豊富に通っていて、
使えば太くなり、休めば細くなり、
また使えば戻ってきます。

戻るものと、戻りにくいもの。

身体の中には、この2種類があるということです。

変形性膝関節症の推定有病者は、
国内で約2,530万人と報告されています。

40代ではまだ先の話に思えますが、
軟骨は何十年もかけて、
静かにすり減っていきます。

入口に立つ年齢ではあるのだと思います。

出典:Current concepts in the articular cartilage repair and regeneration
ROADスタディ|変形性膝関節症の患者数推計

階段は、膝を削っていたのか

階段の負荷と減量による膝負担の軽減を天秤で表す図解

ここは正直に書きます。

1994年に英国で行われた研究では、
仕事で1日10階分以上の階段を登る人は、膝の変形性関節症のリスクが約2.7倍と報告されています。

私は11年、それより多い階段を
往復してきました。

この研究だけを読めば、
私は “削っていた側” です。

2020年の系統的レビューでも、
仕事で登る動作の多い人は膝の変形性関節症になりやすい傾向が、
重い物を持つ、膝をつく、しゃがむと並んで示されています。

ただ、研究が見ているのは、
こうした負荷が1日中重なる職業です。

朝の階段登り降りだけを切り出した研究ではありません。

それでも “削っている” 可能性は、
消えないまま残ります。

そして、同じ11年で
体重は13 kg落ちました。

減量によって歩くときに膝へかかる負荷が減ることも、
研究で示されています。

削った分と、軽くした分。

どちらが大きかったのかは、まだ分かりません。

私の膝の、今のところの記録

右膝の内側の少し下、
鵞足と呼ばれるあたりに
違和感を覚えていた時期がありました。

関節そのものというより、
大腿の腱が骨に付く場所です。

最近は、ほとんど感じません。

自分の膝をMRIで見る機会もありました。
半月板に、損傷はほぼ見られませんでした。

軟骨がどれだけ残っているかまでは、
この1回で言い切れるものではありません。

それでも、11年分の往復のあとで、
現在のところ半月板が無事だったことは、
小さな安心でした。

出典:Occupational activity and osteoarthritis of the knee
Occupational Risk in Knee Osteoarthritis: A Systematic Review and Meta-Analysis of Observational Studies. Arthritis Care Res. 2020
Weight loss reduces knee-joint loads in overweight and obese older adults with knee osteoarthritis

筋肉は、関節を守れる

階段を静かに降りる脚と手すりに添えた手のイメージ

消耗品の話には、続きがあります。

関節は戻らない。
けれど、筋肉は関節の盾になれる。

大腿の前の筋肉が弱い人は、膝の変形性関節症を発症しやすい。
そう報告した追跡研究があります。

ただし、この研究で差が出たのは女性で、
男性では明確な差が見られませんでした。

そこは、そのまま書いておきます。

階段の登り降りで育ててきた大腿は、
膝を削る側にも、
守る側にもいたのだと思います。

登りで押し出し、下りで減速する。

その減速の仕事を筋肉が引き受けているあいだ、
軟骨への衝撃は少しだけ減るはずです。

下りの着地を静かにする。
歩幅を半段小さくする。

そうした具体的な工夫は、
関節負担を軽減する7つのコツに
まとめてあります。

合わせて読みたい

膝に違和感が出たときの判断基準は、
膝が痛いときの対処法に書きました。

合わせて読みたい

出典:Reduced quadriceps strength relative to body weight: a risk factor for knee osteoarthritis in women?

増やすより、減らさない設計へ

脂肪・筋肉・関節を「戻せるか」で分けた40代の運動設計の図解

11年目の運動は、
身体を変える仕事から、
保つ仕事に変わりました。

その話は、数字が止まった先に続ける意味に
書いています。

合わせて読みたい

関節の話は、その続きにあたります。

落としてよいものと、
落とせないものを分ける。

脂肪は、落としてよかった。
筋肉は、落としても戻せる。
関節と骨は、戻しにくい。

だから40代の運動は、
「増やす」より
「減らさないように使う」設計になります。

私が追い込まなかったのは、
意志が強かったからではありません。

けれど結果として、
それが関節の手入れだったのかもしれません。

盆栽と同じで、
枝を折らないことが先にあります。

転ぶことも、
関節にとっては一発の損失です。

何もないところでつまずいた日のことは、
11年登っても、つまずくに書きました。

合わせて読みたい

13 kgのうち何を落として何を残したかは、
BMI 27.4 から 23.7 への記録に
並べてあります。

合わせて読みたい

まとめ:戻らないものから、先に守る

秋の朝、石段を静かに降りていく人の後ろ姿

関節は消耗品で、戻らない。

その前提を、私は否定しません。

ただ、同じ前提から、
3時45分に起きて走る人もいれば、
朝の階段を静かに登り降りする人もいる。

答えはひとつではないのだと思います。

削った分と、
軽くした分。

その差し引きは、たぶん何年か先に、
膝のほうから教えてくれます。

それまでは、戻らないものから先に守る。

今日もそういう順番で、
階段を登り降りしてきました。

階段が身体にどう効くのかは、
『なぜ階段は効くのか』(Kindle)にまとめています。


日々の小さな記録は、noteのマガジンにも静かに綴っています。

ひのとみのいしころ|静かに熱い40代の記録

おことわり

本記事は情報提供を目的としており、特定の効果・効能を保証するものではありません。

健康に関するご判断は、必ず医師・専門家にご相談ください。

本記事で使用した画像はNapkin AIを利用しています。

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